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2024.01.15

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【特集:水宅配業界地図2024】プレミアムウォーター首位譲らず 浄水型サーバーの市場が拡大 [1/2]


2023年の水宅配市場では、業界最大手のプレミアムウォーターが引き続き単独首位をキープする形となった。一方、燃料価格や人件費の高騰、円安の影響などから、業界全体で、配送コストが大幅に高まっている。配送会社に水ボトルの配送を委託する「ワンウェイ」型の水宅配企業は、強烈なボディーブローを食らい続けている。物流コストが高まり続ける中、宅配水ではなく、水道水をろ過して使用する浄水型サーバーの市場が拡大している。宅配水から浄水型サーバーに切り替える顧客も増加している。2024年の宅配水市場では、顧客のニーズと、提供したいサービスのバランスを取っていくことがさらに求められるようになりそうだ。

【CONTENTS】
・プレミアムウォーター 金本彰彦社長 「 顧客数160万件、防災備蓄意識高まりも後押し」
・ 富士山の銘水 粟井英朗 社長 「グループで当期利益1000億円へ エベレスト天然水など七つの事業を柱に」
・ナック クリクラビジネスカンパニー代表 小磯雄一郎 取締役専務執行役員 「安心・安全な水を安価に提供する」
・アクアクララ 赤津裕次郎社長 「コストコなど新規獲得の販路を拡充」
・ウォーターネット 佐藤英夫社長 「地方自治体や万博にも熱中症予防で協力」
・【注目の水宅配支援企業】住友重機械搬送システム 「 ディープストレージ式高密度自動倉庫 Magic Rack」水ボトルの倉庫保管量を2倍に 大手水宅配企業にも導入が決定
・【注目の水宅配支援企業】ヤマトマテリアル 、浄水型水ボトルも開発中 サーバー換えず浄水市場に参入可


夏季の猛暑により消費量が拡大

2023年1~12月の水宅配市場の規模は、本紙推定で約2400億円だった。(一社)日本宅配水&サーバー協会(JDSA、事務局東京都)が算出している、2022年1~12月の宅配水の市場規模は、約2115億円。複数の業界関係者への取材から、2023年の水宅配市場は業界全体で、前年比で10~15%拡大していると見られる。

水宅配市場が拡大している要因は二つある。

一つは、2023年夏季の猛暑による水消費量の増加だ。大手から中小まで、多くの水宅配企業から、「7~10月は水の消費量が高まった」という声が聞かれた。水の消費量は各社によってばらつきがあるが、顧客1件当たりの水の消費量は、前年同月比で1.3~1.5倍に伸びたと見られる。

猛暑の影響で、新規顧客の獲得も好調だったという声が聞かれた。

2022年ごろから、水宅配各社が、水ボトルの価格を値上げしたことも、市場拡大の要因となった。

顧客件数では業界4位のナック(クリクラ)は2022年10月、5.8リットル入りのクリクラボトル(水ボトル)の1本あたりの価格を、70円値上げした。12リットル入りは130円の値上げとなった。

TOKAIでは2022年12月、水ボトルの価格を64~85円値上げした。

資材価格や燃料費の高騰を受け、各社が価格改定を行っていることから、市場全体の流通総額は上昇しているとみられる。

市場の流通総額が伸びている一方で、各社の、顧客件数は伸び悩んでいる。

業界最大手のプレミアムウォーターが、半年で10万件以上の新規顧客を獲得する一方で、多くの事業者は「顧客件数は増加しているが、大きくは伸びていない」と口をそろえる。

他の追随許さないプレミアムウォーター


 水宅配国内最大手のプレミアムウォーターは、2023年3月期の売上高が、前期比11.7%増の764億6300万円となった。2023年9月末時点の顧客件数は160万件を超えたとしている。

大型の商業施設での催事販売やテレマーケティングによる顧客獲得が好調なのが、新規顧客獲得が進んでいる要因だとしている。「業界最大手」としての知名度が拡大していることにより、ウェブ経由の新規申し込みも増加しているという。

深刻な物流コストの高騰


水宅配市場では、物流コストの高騰の影響を大きく受けている。水宅配は、通常の通販に比べて、荷物(水ボトル)が大きく重い。12リットルボトルの場合、幅25センチ×幅25センチ×高さ30センチといったサイズが一般的だ。配送会社にとって、大きくて重い荷物は、負担が大きい。

業界関係者によると、「ワンウェイ」型の水宅配を行うある会社は、2023年、顧客1件当たりの配送委託料を2000円に値上げすることを要請されたという。2019年の配送委託量は400円だったということなので、4年で約5倍になった計算だ。

業界最大手のプレミアムウォーターは、大手配送会社に委託する割合を減らし、半数以上を、自社物流網(独自に契約した地域の配送会社)に切り替えている。そのため、配送コストの抑制に成功しているという。

ただ、プレミアムウォーター以外の「ワンウェイ」の水宅配会社にとっては、今後も物流コストの高騰が続く可能性がある。


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