富士山の銘水など2社が浄水市場をけん引
そうした中、注目を集めているのが、浄水型サ―バーだ。浄水型サーバーの市場をけん引しているのは、「フレシャス」「エブリイフレシャス」ブランドを運営する富士山の銘水(本社山梨県)と、「コスモウォーター」「ハミングウォーター」ブランドを運営するコスモライフ(本社兵庫県)の2社だ。
浄水型(給水型)ウォーターサーバーは、水道水をウォーターサーバーのタンクに組んで、サーバー内部でろ過して使用する機器だ。宅配水のウォーターサーバーと同様、温水や冷水にして取水することができる。
浄水型サーバーは、宅配水と異なり、水道水をユーザーが自分で汲んで使用する。水ボトルが毎月届くことがなく、重い水ボトルをサーバーに設置する必要もない。浄水型サーバーのレンタル料は、月額3000円前後で設定されているケースが多く、宅配水の月額料金と比較すると安く利用できる場合が多い。
浄水型サーバーの市場をけん引している富士山の銘水やコスモライフは、商業施設などでのブース販売で、「宅配水よりも安く利用できる」などと提案している。そうした営業トークが、物価高で財布のひもが固くなっている消費者の心理に刺さっているようだ。
水宅配各社に取材すると、「自社の水宅配サービスに契約していた顧客の中で、『他社の浄水型サーバーに切り替えたい』という人が増えている」といった声が多く聞かれた。
宅配水を扱う各社は、浄水型サーバーを、自社のサービスのラインアップに加えるようになっている。他社から切り替えを提案された際に、自社の浄水型サーバーのサービスを提案し、顧客離れを防いでいるようだ。
浄水型サーバーにJIS規格
ある浄水型サーバーのOEMメーカーによると、日本国内の浄水型サーバーの普及台数は現在、100万台前後だと見られるという。
物価高で給料がなかなか上がりにくい時代背景から、今後も、浄水型サーバーのニーズは拡大していく可能性が高い。
一方、水宅配各社は、浄水型サーバーのニーズの拡大を、諸手を上げて喜んでいるわけではないようだ。
各社はこれまで、「安全でおいしい水を製造して届ける」ということを、付加価値の高いビジネスとして展開してきた。各社は、RO水や天然水を、HACCPなどの食品安全の基準を満たした専用の工場で製造・充填し、配送している。「当社は食品メーカーである」という自負を口にする企業も少なくない。
浄水型サーバーは、経済的にユーザーにメリットがあるとはいえ、水道水をユーザーが自分で管理して飲む必要がある。その点に違和感を覚えている企業が多いようだ。「浄水型サーバーは、水の温度を変えられる電化製品だ」と話す水宅配企業もある。
2023年5月には、消費者庁が、「ショッピングモールなどでのウォーターサーバーの契約に関して、トラブルが増加している」という注意喚起を行った。消費者庁によると、「ショッピングモールでウォーターサーバーのレンタルサービスに契約したところ、説明にはなかった割賦販売による購入プランだった。解約すると、高額な残債を請求された」といったトラブルが増えていたという。
業界内に、浄水型サーバーへの不信感が絶えない背景には、こうしたトラブルが、浄水型サーバーの販売で起きていることもありそうだ。
そんな中、浄水型サーバーにJISの規格基準を設ける動きがある。
(一社)浄水器協会によると、浄水型サーバーを、「サーバー型浄水器」としてJIS化する動きに、2024年中に着手するよう進めているという。JDSAなどの関係団体や、経済産業省と調整しつつ、進めていくとしている。
浄水型サーバーにJIS規格が設けられれば、消費者が浄水型サーバーに契約する際に、安全性の後押しになる。JIS規格に準拠しない粗悪品の抑止にもつながるという。
JIS規格が設けられた暁には、業界全体での周知徹底が求められそうだ。