「クリクラ」ブランドでリターナブルボトルを利用した宅配水事業を展開するナックは、「安心・安全な水の提供」に主眼を置いてサービスを行っている。同社はこれまで、宅配水事業を展開してきたが、2023年には、浄水型ウォーターサーバーの新機種「putio(プティオ)」の販売も開始した。ウェブ広告で積極的に集客し、拡販を進めている。同社では、ボトルドウォーターのサーバーを、年に1回、洗浄・殺菌・メンテナンスしたサーバーと交換するサービスを提供している。浄水型ウォーターサーバーの事業においても同様に、一年に1度のサーバー交換のサービスを打ち出している。ナックの小磯雄一郎取締役専務執行役員に、今期の事業の進捗などについて聞いた。
値上げの影響が長引く
――2023年の宅配水事業の進捗について聞きたい。2023年は総体的に予想通りだった。
夏季の猛暑の影響でボトルの消費量が前年と比べ増加した。それに伴い売上高も増加した。
一方で、2022年10月に行った「クリクラボトル」の値上げの影響が想定よりも長引いた。
クリクラボトルの価格改定は、この10年間で3度目となる。価格の改定後は通常、わずかながら解約率が増加する。ただ、3カ月程度で解約率は元に戻るのが通例だった。今回は、前回よりも解約率の回復に時間がかかっている。
――物価高が続いている。宅配水の顧客に影響は。
世間全体的に物価が上昇し、所得が上がらないという状況がある。消費者は財布のひもを固く締めているという状況はあるのではないか。
一方で、水の消費量が増加している地域もある。ウォーターサーバーのニーズはあるところにはあり、市場が伸びる余地も十分あると考えている。
――コロナの5類への分類変更で、アフターコロナとなった。変わったことは。
2023年3月以降、クリクラの加盟店には、催事のブース販売などによる新規顧客獲得を積極的に促すようにした。
ただ、地域によってはまだまだ、外出自粛が続いているところが多い。特に、東北エリアでは今も、コロナ禍と同様の状況が続いている。
東北の中でも、県によって状況が違ったりもする。宮城などの南東北のエリアは顧客が減少傾向にある。秋田県では、顧客が増加している。
当社には、法人の顧客も多い。建設現場がクリクラを導入し利用してくれるケースも少なくない。そのため、建設現場が撤収することにより、法人契約が解約となるケースも少なからずあった。
安全・安心な浄水サーバー
――ウォーターサーバー市場では浄水型ウォーターサーバーのニーズが引き続き高いがどう見るか。浄水型ウォーターサーバーのニーズは、今後も高い状況が続くだろうとみている。当社でも、7月から新たに、浄水型ウォーターサ―バー「putio」の提供を開始した。
当社はこれまで、宅配水を販売してきた。食品としての「水」を販売する企業には、大きな責任があると、当社では考えている。
浄水型ウォーターサ―バーには、「水道水を使う」「消費者が自分で水を汲んで管理する」といった側面がある。そういった点について、宅配水のウォーターサーバーとの比較の中で、安全性に不安を感じる人もいる。
ただ、当社が提供している浄水型ウォーターサーバーについては、宅配水を提供してきた会社として、安全性の面を強く訴求したい。
浄水型ウォーターサーバーについても、サーバーは必ず年に一度交換する。メンテナンスの体制も、宅配水のメンテナンスの体制と同様だ。
「putio」については、取水口直前に、強い殺菌機能を持つ紫外線LEDライトを採用している。LEDライトは、120ワットのハイパワーLEDだ。
市場は現在、物価高の中、賃金は上がらないという二重苦の状況にある。こうした状況で、安くきれいな水が飲める浄水型ウォーターサーバーがトレンドになるのは当然だろう。若い人や単身者、ボトルを持ち上げるのに苦を感じる高齢者の間に、ニーズが高まっている。
ただ、社会情勢が上向けば、ボトルドウォーターのニーズは回帰すると考えている。
当社としては、「安心安全な水を提供する」という点にフォーカスして、サービスを進化させていきたい。
環境配慮商品が当たり前に
――環境保護に対する御社の考えについて聞きたい。現在、環境に配慮した製品の価格はおおむね高い傾向がある。そのため、物価高でありながら給料が上がりづらい日本の状況において、環境に配慮した製品は根付きづらい雰囲気があるが、ゆくゆくは環境配慮型商品が当たり前の時代になってくるとみている。
ヨーロッパは特に、環境に配慮した製品を使うのが当たり前になっている。ペットボトルを使うと税金を取られる国もある。
当社はリターナブルボトルの水宅配事業を展開している。リターナブルボトルは、ペットボトルが出ない水宅配の形で、欧米ではスタンダードな形となっている。
クリクラボトルは、傷がつくなどお客さまに出せなくなってしまっても、定規やマイボトルに再利用している。リターナブルボトルは、リユースし、ペットボトルをリデュースし、廃棄クリクラボトルはリサイクルする。このようなことを、多くの消費者に届けるようにしていきたい。