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2025.11.07

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【コンタクトセンター特集 <「DX」戦略、未来の展望を聞く>】ハルメク・ビジネスソリューションズ 山口泰宜社長、「LINE活用とVOC分析でDX推進」

山口泰宜氏


ハルメクホールディングスのグループでコンタクトセンター事業などを展開するハルメク・ビジネスソリューションズ(本社東京都、山口泰宜社長)では、「LINE」の活用と「生成AI」によるVOC(顧客の声)分析で、「DX」の推進に注力している。「DX」で顧客体験のさらなる向上と業務効率化の両立を目指す。山口社長にコンタクトセンター運営における先進的な「DX」戦略、その背景にある思想、未来の展望などについて聞いた。



──運営するコンタクトセンターにおける「DX」の取り組みについて伺いたい。

ここでは、特に「LINE」やチャットボットの活用についてお伝えしたい。「LINE」とチャットボットを活用する目的は、主に二つある。一つ目は、DMや電話といった従来の手続きにかかるコミュニケーションコストを削減すること。これは、単に費用を抑えるというだけでなく、お客さまを待たせる時間を減らし、オペレーターがより複雑な対応に集中できる環境を作るという、サービス品質向上にも直結する重要な目的だ。

二点目は、LINE公式アカウントを起点とした販促活動を強化する狙いがある。お客さまとのエンゲージメントを高め、よりパーソナライズされた情報提供を行うためのプラットフォームとして、LINEの活用を進めている。

──具体的な取り組みの内容は。

現在、電話で寄せられる問い合わせの中で、特に件数が多いのが、(1)通販の定期商品の休止・解約(2)商品の返品・交換(3)雑誌「ハルメク」の休止・解約(4)雑誌「ハルメク」の継続申し込み─の4パターンだ。これらの定型的な手続きは、お客さま自身で解決できる可能性が高い領域だと思っている。

そこで、これら四つの主要な手続きを、お客さま自身がチャットボットを使って自己解決できるようにする仕組みを構築した。具体的には、雑誌「ハルメク」の誌面や、商品に同梱するチラシに専用のQRコードを掲載し、そこからチャットボットにアクセスしてもらうという流れだ。これにより、電話をかける手間がなく、お客さまの好きなタイミングで手続きを完結できるフローを実現している。

──問い合わせ件数の削減という効率化の側面だけでなく、顧客理解を深めるという点でのDXの取り組みについても伺いたい。

そこがまさに、当社が最も力を入れている部分だ。現在、VOC(顧客の声)分析の仕組みを大きく変革している最中だ。これまでも、お客さまからのご意見、特にネガティブな内容やクレームについては、オペレーターが手動で記録し、分析を行ってきた。しかし、この方法には二つの大きな課題があった。

一つはオペレーターの主観や要約のスキルによって情報にばらつきが出てしまうこと。もう一つは「この商品がとても良かった」「この記事に感動した」といったポジティブな声や、クレームには至らないまでも改善のヒントとなるような貴重な声が、多忙な業務の中で埋もれてしまいがちだったということだ。

──その課題をどのように解決しようとしているのか。

解決策として、お客さまとの通話内容を全件テキスト化し、生成AIを用いて分析するという、より高度なVOC分析システムの導入を進めている。このシステムは現在PoC(概念実証)の段階を終え、10月中の本格リリースを目指している。この仕組みが稼働すれば、オペレーターの負担を増やすことなく、全てのお客さまの声を網羅的かつ客観的にデータとして蓄積できるようになる。

──全件テキスト化と生成AIの活用によって、具体的にどのようなことが可能になるのか。

主に二つあると考えており、一つは先ほど申し上げた「ポジティブな声」の定量的な可視化だ。例えば、「新商品が、これまでにないほどおいしかった」「あの特集号での言葉に勇気づけられた」といったお客さまの喜びの声を、商品や雑誌のカテゴリー、さらには特定のキーワードごとに定量的に把握できるようになる。これは次の商品開発や企画立案において、データに基づいた意思決定を可能にする、非常に貴重な資産となる。

もう一つはネガティブな声の「真の要因」の深掘りが可能になるとみている。これまでのVOC分析では、オペレーターが「こういうクレームだった」と結論を先に記録していたが、生成AIを使えば、会話の文脈全体から、お客さまが本当に不満に感じているポイントや、その背景にある感情を客観的に抽出できる。これにより、これまで見過ごされてきた潜在的な課題を発見し、より本質的なサービス改善につなげることができる。

──今後の展望は。

当社のミッションは、お客さまの声を起点として、商品やサービスを絶えず改善し、最終的にはお客さまの生活そのものをより豊かにしていくことだ。そのために、当社はこれからも「DX」を積極的に推進し、顧客体験の向上と業務の効率化という、二つの目標を高いレベルで両立させていきたいと考えている。

何より重要なのは、「DX」によって生み出された時間やリソースを、オペレーターの教育や、働きがいを感じられる環境づくりに再投資していくことだ。テクノロジーの進化は止まらないが、最終的にお客さまの心に響くのは、「人」の温かさや想いだと信じている。この好循環を力強く回し続けることで、お客さまにとっても、働くスタッフにとっても、そして会社にとっても価値のあるコンタクトセンターであり続けたい。

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