正社員として雇用することで、「オペレーターが裁量権を持つことができ、より責任感を持って働くようになる」(事業運営部サブマネージャー・原田勇生氏)と話す。顧客の声をサービスの改善に直結させる「プロフィットセンター」として機能し、高い顧客満足度とリピート率向上を支えている。
さらに正社員による運用は、予期せぬトラブルが発生したときに真価を発揮するという。
「レンタル品という特性上、『届いた商品が動かない』『使い方が分からない』といった問い合わせは避けられない。その際、担当者が『上長に確認します』と何度も保留にするのではなく、その場で最善の解決策を判断し提案できる。この迅速で柔軟な対応が、顧客の不安を安心に変え、信頼へとつながっている」(同)と話す。
内製化で連携が密に
レンティオはコールセンターを「コストセンター」ではなく、「プロフィットセンター」として明確に位置付けている。例えば、「このような商品はないのか」という要望は即座に仕入れ部門に共有し、新たな取扱商品の検討材料になる。「サイトのこの説明が分かりにくい」という指摘は、開発・デザイナーチームにフィードバックして、UI/UXの改善に生かしていく。
コールセンター、開発、物流といった部門間の距離が近い内製化体制だからこそ、密な連携を取ることができる。
「通常の小売りでは商品を買ってもらって終わりだが、当社のサブスクリプションサービスのモデルでは、レンタル期間中の顧客との接点が続く。その中でいかに満足度を高めるかが重要になる。この姿勢は投資家からも高く評価されており、『リピート率の高さ』の源泉として注目されている」(三輪社長)と話す。
研修・ツールで能力向上
現時点で「Rentio」の取扱商品数は7200種類以上に及ぶ。これら全ての商品知識を33人ほどのオペレーターが網羅するのは不可能に近い。同社は研修と独自のツールで困難を乗り越えている。
新入社員の研修では、CS担当として入社した社員は、最初に物流部門で出荷や検品作業を経験する。
「商品がどのように梱包され、お客さまの元に届くのか。返却された商品はどういう状態なのか。これらを自分の目で見ることで、お客さまの立場に立ったリアルな対応ができるようになる」(事業運営部サブマネージャー・平柳洸介氏)と話す。
日々の業務では、生成AI「Gemini」や情報共有ツール「ドックベース」、ビジネスチャット「Slack」をフル活用している。特に知識を「記憶」するのではなく、必要な情報を「探す」スキルが重要だという。
「社内の情報共有ツールには、過去の問い合わせ事例や商品ごとの注意点、対応ノウハウが膨大に蓄積されている。オペレーターは、これらの情報の中から最適な回答を迅速に検索し、顧客に提供する訓練を積んでいる。『ルンバに詳しいのは原田さん』『このカメラのことは三輪さんに聞こう』というように、社員間のコミュニケーションも活発になる」(同)と言う。
「守り」から「攻め」に
今後、「Rentio」において、取扱商品やサービスをさらに多角化していく考えだ。その中でCS部門は「テクノロジーによる効率化」と「人材の戦略的育成」という二つの軸で、さらなる進化を目指している。
まずAIとデータ基盤の強化に取り組んでいく。平柳サブマネージャーは「人を増やすという物量作戦だけでなく、AI活用や情報データベース化といった『仕組み』をさらに強化していく必要がある」と語る。
現在点在している商品情報や過去の対応履歴、FAQといった膨大なナレッジを一つのデータベースに統合する。オペレーターが必要な情報へ瞬時にアクセスできる環境を整備する。さらに、生成AIを活用し、顧客からの問い合わせ内容を分析、最適な回答候補や関連情報をオペレーターの画面に自動で提示するシステムの構築も視野に入れていくという。
オペレーター個人の知識量や経験値に依存することなく、誰もが高い水準の顧客対応を維持できることを目指す。単純な質問はシステムが補助し、オペレーターはより複雑で個別性の高い相談や、顧客の潜在的なニーズを引き出すという付加価値の高いコミュニケーションに集中できる。これにより、CS部門は受動的な「問い合わせ対応」から、能動的に顧客体験を向上させる「攻め」の拠点へと進化していく。
