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2024.01.18

連載

専門家

【有識者に聞く!電子帳簿保存法の基本解説】第一回 電子帳簿法とはそもそも何か


2023年12月31日で、電子帳簿保存法の宥恕(ゆうじょ)期間が終了した。昨年10月にインボイス制度に対応したばかりで、次は電子帳簿保存法。経理や総務など管理部門の方にとっては心が休まらない状況が続いているだろう。弊社は昨年12月に電子帳簿保存法の解説セミナーを開催したのだが、参加者の半数程度は、1月から変わる電子帳簿保存法について情報収集の途中という段階であった。

今回の連載では、全3回に分けて電子帳簿保存法の概要を分かりやすく解説し、発生している課題や、どのような対応が必要かについてお伝えする。


電子帳簿保存法とは


電子帳簿保存法とは、これまで原則として紙での保存が義務づけられていた帳簿書類について一定の要件を満たした上で電子データによる保存を可能とすること、および電子的に授受した取引情報の電子保存義務等を定めた法律である。ペーパーレス化を推進することで、企業の帳簿や領収書・請求書などの保存処理にかかる負担軽減が見込まれる。

電子帳簿保存法はテレビCMなどで聞く機会も増えたため、新しい法律と勘違いする方もいるが、法律自体は1998年に施行されている。しかしながら、厳しい要件を満たすことが難しく、なかなか電子データでの保存は浸透しなかった。ペーパーレス化を進めたい政府の意向もあり、これまで繰り返し改正されてきている。

電子帳簿保存法を理解するには、まず3つの区分を理解することが必要だ。どういった書類を扱っているか、また、書類を紙または電子のどちらでやりとりしているかによって、電磁的記録による保存方法は「①電子帳簿等保存」「②スキャナ保存」「③電子取引データ保存」の3つに区分できる。







 

電子帳簿保存法の対象帳簿・書類


電子帳簿保存法の「電子帳簿等保存」と「スキャナ保存」のポイント
 
まずは、電子帳簿保存法の「電子帳簿等保存」と「スキャナ保存」について、それぞれ特に知っておきたいポイントをご説明する。

1.電子帳簿等保存:電子帳簿の利用で紙帳簿の7年間の保管が不要
 

「電子帳簿等保存」とは、自身がPCなどで作成した帳簿や書類を電子データのまま保存する際のルールである。クラウド型の会計ソフトなど、電子帳簿保存法の要件を満たした電子帳簿を利用すれば、紙帳簿の場合に必要になる7年間の保存が不要だ。紙の状態で7年間保存するというのは、物理的なスペースを確保しないといけなくなるなど大変なことも多いため、不要で良いというのは管理部門の方の業務効率化にもつながるのではないだろうか。




2.スキャナ保存:タイムスタンプと検索要件の緩和
 
「スキャナ保存」とは、紙で受領・作成した書類を電子化して保存する際のルールだ。これまでも、紙でやりとりした書類をスキャナ保存する場合、タイムスタンプの付与や、複数の要件を満たす必要があった。これは電子で保存する場合の改ざんを防止するためである。その要件が2022年1月の改正ではタイムスタンプ付与期間が概ね3営業日以内から最長2カ月+概ね7営業日以内と延長され、検索要件も「取引年月日その他の日付」「取引金額」「取引先」の3つのみに緩和された。なお、2024年1月の改正ではこのスキャナ保存の要件がさらに緩和されており、より対応しやすくなっている。 





昨年12月にゆうじょ期間が終了した、電子取引データの保存について

さて、ここからが今年の1月からの変更点である。電子帳簿保存法の改正で最も大きな変更点は、対象書類を電子で送る、受け取る場合には、紙での保存ができなくなるという点だ。これまでは電子データでやりとりした書類でも、紙に出力して保存することが認められていたが、今後は電子データでの保存が義務となる。しかし、多くの企業で2022年1月の法律の施行開始に対応が間に合わず、電子取引データの保存に関しては2年の宥恕(ゆうじょ)期間が設けられていた。その宥恕(ゆうじょ)期間が昨年12月に終了し、この1月から対応が必要になったのである。

なお、2023年度の税制改正大綱により、相当の理由によってシステム対応を行うことができなかった事業者は、2024年以降も一定の条件下で電子取引の出力書面(紙)の保存が可能とされている。



電子データの保存方法については、「データをパソコンのフォルダに保存するだけでは条件は満たせないか」と質問されることがよくあるが、電子取引でのデータの保存の際には「真実性の要件」と「可視性の要件」を満たす必要があり、パソコンのフォルダに保存するだけでは条件を満たせないケースが多いのでご注意願いたい。




 
以上が電子帳簿保存法の概要ならびに変更点である。次回は昨年10月に施行されたインボイス制度、そして電子帳簿保存法の対応について、特にEC事業者が考慮すべき課題について事例を踏まえて紹介する。


(つづく)




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