LINEヤフーが運営するECモール「Yahoo!(ヤフー)ショッピング」の流通額(GMV)が復調傾向にある。2025年4-6月期(第1四半期)における「ヤフーショッピング」のGMVは、前年同期比6.9%増だった。「ヤフーショッピング」のGMVの復調要因や、現在の「ヤフーショッピング」の課題、今後の展望などについて、執行役員ショッピング統括本部長の畑中基氏に聞いた。
──2025年上半期の業績が好調だった要因は。
要因は主に二つあると考えている。まず第一に、今年2月から本格的に開始した「PayPayポイントの限定化」施策だ。2月1日以降、「ヤフーショッピング」などでキャンペーン・特典で付与されるポイントを、原則「PayPayポイント(期間限定)」に変更した。これにより、お客さまのリピート購入が当社の想定を上回る形で増加した。
そして第2に、「PayPayアプリ」を起点とした新規のお客さまの流入が著しく増加したことが上げられる。特に、これまで「ヤフーショッピング」を積極的に利用していなかった「PayPay」ユーザーが、アプリ内で自分のポイント残高や利用履歴を確認する流れで、当モールに興味を持ってくれるケースが非常に増えている。この流れを加速させるため、新規のお客さま向けに1000円から1500円相当の限定ポイントを付与するキャンペーンも展開しており、これがフックとなり、新しいお客さまを呼び込むことに成功している。
──販促の戦略においても何か変えたことはあったのか。
販促の考え方を大きく進化させたという表現が適切だと感じている。昨年までは「超PayPay祭」のような大型イベントが開催されない月もあったが、今年度からはお客さまに常にワクワクしていただけるよう、毎月何かしらの大型販促イベントを実施する方針に切り替えている。
その一環として6月から開始した新たな施策「爆買WEEK」は大変好評で、大きな成果を上げている。キャンペーン期間中に対象ストア(「BONUS商品」があるストアなど)で一定以上の金額を「PayPay」や「PayPayカード」など指定の支払い方法で購入すると、通常ポイントに加えて+2%などの追加還元が受けられる。
当社の戦略は、「PayPay」連携などで獲得した新規のお客さまという「ベース」を積み上げて、その上で大型販促によって売り上げの「山」をより高く作るというものだ。この好循環が生まれ始めているのが、現在の当社の強みだと分析している。
リピーター獲得が課題
──好調の一方で、今後の課題は。
最大の課題はリピーターの獲得、特にヘビーユーザー層のさらなる拡大と、それに伴うブランドイメージの確立だ。現状、多くのお客さまにとって「ヤフーショッピング」は「PayPayが使えてお得」というイメージが先行していると思う。それは大変ありがたいことだが、持続的な成長のためには、それだけでは不十分だ。
「ネットで何かを買うなら、まずは『ヤフーショッピング』を見てみよう」と思っていただけるような、”第一想起”のポジションを確立するには至っていない。「このジャンルなら『ヤフーショッピング』だよね」という、お客さまの心に深く根差した強力なブランドイメージを築くことが、次のステージに進むための鍵となるとみている。
──その課題を解決するために、特に注力していくカテゴリーはあるか。
「グルメ」のカテゴリーに注力していく。おいしいものを買うなら「ヤフーショッピング」と、お客さまに真っ先に想起していただけるような、圧倒的なポジションを確立したいと考えている。
──なぜ「グルメ」なのか。
グルメは、老若男女問わず誰もが日常的に関心を持つ、非常に裾野の広いカテゴリーだ。そして何より、リピート購入につながりやすい特性を持っている。ここに注力することが、モール全体の活性化、ひいてはお客さまの利用習慣を定着させる上で不可欠だと判断した。
具体的な取り組みとして、人気インフルエンサーにご協力いただいたり、全国のストアやメーカーと深く連携して、「ヤフーショッピング」でしか手に入らないオリジナル商品を開発したりといった施策を積極的に進めていく。海鮮やお肉、スイーツなどさまざまな店舗とも連携し、お客さまに新しい価値を提供していきたい。
──LINEヤフーとして、グループ全体のシナジーも大きな武器になると思う。
おっしゃる通り、グループの連携は当社にとって最大の武器であり、まだまだポテンシャルを秘めている領域だ。特に「PayPayカード」との連携は、今年の下期からさらに強化していく計画だ。例えば、既にトライアルとして実施している「5のつく日」に「PayPayカード」で決済するとさらにポイントがアップするといった施策を、より大きなキャンペーンとして本格的に展開していく予定だ。
LINEやソフトバンクとの連携も同様だ。それぞれのサービスが持つ膨大なお客さまとの接点を最大限に生かし、シームレスに「ヤフーショッピング」へとつなげていく。
──国内に目を向けると、10月からふるさと納税のルールが厳格化される。この大きな変化にどのように対応していくか。
9月末にかけて、駆け込み需要の影響がGMVに貢献したが、今後はポイント還元を前面に押し出した過度なプロモーションを行うことはできない。今回のルール変更を機に、ふるさと納税が本来持つ「地方を応援する」というすばらしい趣旨に、業界全体で立ち返るべきだと考えている。
当社が持つ「LINE」などのツールを活用し、例えば自治体の公式アカウントを通じて、寄付者と自治体が直接的かつ継続的につながるような仕組みを構築できないかと模索している。それは、単に返礼品を送って終わりという一過性の関係ではない。
その地域のファンになってもらい、その後の特産品の購入(物販)につなげていく。そうした本質的で、持続可能な関係づくりをサポートすることこそ、われわれプラットフォーマーが提供すべき真の価値だと考えている。いかに長期的な視点で地方創生に貢献できるかが問われることになる。
