「ポーラ エステ 亜由美」のショップオーナーである栗原明美氏は、横浜・横須賀地域で42年にわたり、ポーラの、商品の販売や、エステの提供に取り組んできた。栗原氏のサロンは、単にエステを提供する場にとどまらず、地域社会の活力を生み出す「コミュニティーの拠点」となっているようだ。その中心をなしているのが、栗原オーナーが独自に考案した、シニア世代の美容意識を高める「老止(おとめ)の日」。栗原オーナーに、「地域との共創」の取り組みと、これまでの販売活動について聞いた。
話すことの苦手意識からスタート
──「ポーラ」で仕事を始めたきっかけを教えてください。
話すことにコンプレックスがあったんです。この仕事で少しでも話し上手になれるかなと、安易な気持ちで始めたのが42年前。当時30歳でした。当初は訪問販売からスタートし、長年活動を行う中で、現在の隠れ家的なサロン「ポーラ エステ 亜由美」を15年ほど前に開設しました。
「亜由美」という店名は、「一歩ずつ進んでいく」という「歩み」の思いを込めて名付けました。
現在は、当店を拠点に訪販を行うビューティーディレクター(BD)が8人いて、エステをメインで行う人が7人います。合計15人が活動しています。サロンには、ベッドを3台、マッサージチェアを3台設置しています。
お客さまのためにと始めた努力は実を結び、私の売り上げのピークとしては、月商100万円を連続達成していた時期もありました。
私が仕事を始めた当初は、日商(1日当たりの売り上げ目標)を紙に書いて、お客さまの情報を管理していました。
売り上げや購入商品以外のお客さまの情報は、特にメモなどはしていませんでした。
お客さまのお宅を訪問すると、いろいろなものが目に留まるので、その目で見たものと一緒にお客さまのことを覚えていたと記憶しています。
かつて、訪販が主だったころは、「エステミニ」という持ち運びタイプのエステ機器を持って、お客さまのお宅に伺って、フェイシャルエステを提供していました。
それをきっかけに、営業所で長座布団などを使って簡易的なベッドを作り、お客さまに来ていただいて、フェイシャルエステをしていました。
「エステミニ」を持ち歩くよりも、来ていただいてエステを提供する方が、特別感を感じてリラックスしてもらえると思います。
郵便局のロビーでの出張ハンドトリートメントにも、いち早く取り組みました。郵便局のロビーにブースを設置して、そこで知り合ったお客さまに、週末などにエステに来ていただくというものです。
私は当時、京急久里浜の商店街で、ハンドトリートメントを提供する場所を探していました。郵便局でのハンドトリートメントは、新しいお客さまとの出会いの場となっています。
コロナ以降、新規のお客さまの獲得がなかなか難しい状況が続いています。高齢で、エステへの来店をやめてしまうお客さまもいらっしゃいます。
ただ、長年続けていただくお客さまもとてもたくさんいらっしゃいます。スタッフも、長く続けてくれる人がとても多いです。
エステで「健康寿命」の延伸
──これまでの活動の中で、記憶に残っているエピソードはありますか。
エステとメークが、お客さまの心と体に変化をもたらしたことがありました。
ある時、事故に遭ってしまい、杖をついてエステに来られたお客さまがいました。
お客さまが、エステとメークを終えて玄関に出たとき、心が晴れやかになって「こんな杖をついてきちゃったのよ」とうれしそうにしていらっしゃいました。杖を忘れて帰りそうになるほど元気になって、まるで昔に戻ったかのような心からの笑顔を見せてくれたんです。
別のお客さまで、ご主人を亡くしてふさぎがちだった人もいました。エステとメークを提供したところ、昔の明るい笑い声とよく見かけていた仕草を取り戻されたことがあったのです。
その時、化粧できれいになることは、女性の健康寿命を延ばすことに直結していると確信しました。
「老止(おとめ)の日」の考案
──独自のイベント「老止(おとめ)の日」を考えたと聞きました。
お客さまが、エステとメークで心と体が変わるということを知ってから、地域の中でも特に「きれいで元気な方がたくさんいる街」を作りたいと思うようになりました。
「老止の日」を最初に考えたのは、17年ほど前で、今年から本格始動させました。まずは、今年の9月に実施しました。
シニア世代の方々が気兼ねなく集まれる場所を提供しようと考えたのです。エステやメークの体験を通じて、お客さまの自己肯定感を高め、心身の活力を取り戻してもらうことを目的としています。普段と異なり、シニア世代の方限定のイベントとなっています。
地域社会を巻き込む
──チャリティーバザーの取り組みも実施されていると聞きました。
きっかけは、ポーラの「がん共生プログラム」という、募金を集めるチャリティープログラムへの参加でした。本社から募金箱をもらい設置したものの、募金を入れるのはスタッフだけで、お客さまに募金の協力を言い出せませんでした。
そこで、「チャリティーバザー」を考えました。お客さまから洋服や小物を寄付してもらいました。お客さまご自身で値段をつけてもらい、サロンでの販売を始めました。洋服を別のお客さまに購入していただき、その代金を全額募金箱へ入れてもらうという仕組みを作ったのです。
本年度は、このバザーで5万円以上の募金が集まりました。能登半島地震の際には短期間で7万円を寄付するなど、大きな成果を上げています。
私は、「どうしたら地域に貢献できるか」を常に考えています。新しいことを考えるのが好きなのです。
当店をきっかけに、横須賀・久里浜地域が、「きれいでいつまでも元気でいる人」がたくさんいる街に変わっていったらいいと考えています。
