超高齢社会において、老化に伴う健康問題の解決が求められている。「腸の老化」は、高齢者の栄養素吸収低下を招き、フレイルなどの健康問題につながるとされているが、ヒトでの評価が難しいため、研究が進んでいなかった。キリンと東京大学はこの課題に取り組み、老化した細胞における生体現象を解明するための共同研究を行ってきた。
研究では、ヒト小腸オルガノイドに老化を誘導し、「糖」や「アミノ酸」の取り込みに関与する遺伝子の発現量が減少することを確認した。また、細胞の性質が変化する「上皮間葉転換(EMT)」が関与していることも明らかにした。EMTは、上皮細胞が間葉系細胞の性質を獲得する現象で、これにより小腸上皮細胞の機能が失われる可能性が示唆されている。

▲細胞老化によるEMT関連遺伝子発現の増加
この研究成果は、腸の老化現象の理解を深め、腸の老化を抑制する機能性素材の開発につながると考えられている。キリングループは、自然と人を見つめるものづくりを通じて、「食と健康」の新たな喜びを広げ、心豊かな社会に貢献することを目指しているという。
研究方法としては、ヒト小腸オルガノイドに抗がん剤「シスプラチン」を用いて細胞老化を誘導し、遺伝子発現量を定量的「PCR法」で評価した。結果として、糖の吸収に関わる遺伝子「SLC5A1」や、アミノ酸の吸収に関わる遺伝子「SLC16A10」の発現量が減少し、糖吸収量も減少していることが明らかになった。

▲細胞老化モデルヒト小腸オルガノイドにおける栄養素吸収関連遺伝子発現および糖吸収量の減少

▲細胞老化モデルヒト小腸オルガノイドにおけるEMTマーカー発現の増加
この研究により、細胞老化モデルヒト小腸オルガノイドにおいて栄養素吸収が低下すること、EMTが誘導されることが確認された。今後、栄養素吸収改善やEMT抑制を標的とした、腸の老化を予防する機能性素材の開発が期待されているという。
※本記事の制作にあたってAIを活用しています。
