「短期集中能力開発」
ーー中間期は猛暑の恩恵もあり好調だったそうだが、その勢いを維持するには営業組織の強化が必要となるのではないか。御社の人材育成戦略について聞きたい。
現代の若手社員は、一つの業務を何年も継続するという従来の考え方ではない傾向がある。短期間で多様な経験を積み、早期に能力開発を実現したいという志向が強い。昔のように「3年間は同じ業務に従事する」というモデルはもはや通用しない。
ナックでは、この変化をネガティブに捉えるのではなく、「人材の早期育成とキャリア形成の多様化」のチャンスと見ている。
具体的にはまず、育成期間の短縮を図っており、「短期で成果を出す」ことに特化した教育システムにシフトしている。
クリクラの新規獲得の専属部隊である「セールスセンター」やイベント営業チームには、新卒や若手社員を積極的に配置している。彼らには、訪問営業などの伝統的手法において、インセンティブやキャンペーンといった「仕組み」を活用しながら、最大限に力を発揮できるよう指導している。
ナックでは、新卒社員にはまず、安定した教育システムを持つダスキン事業において、基本的なビジネスマナーや営業スキルを習得させるようにしている。その上で、個人の適性や希望を考慮しつつ、クリクラ事業へとローテーションさせている。
若手社員に多様なキャリアパスを提供するのがこの仕組みの狙いだ。同時に、企業全体として、効率的かつ効果的に能力開発を行うための仕組みにもなっている。
彼らに「5~10年同じ場所で」と求めるのではなく、むしろ、彼らが「キャリアの流動性」を望んでいることを積極的に生かそうという狙いがある。
宅配水市場は「凪」の時代へ
ーー2026年以降の宅配水市場の展望について詳しく聞きたい。
結論から言えば、宅配水市場は今後、「凪(なぎ)の時代」に入ると見ている。
期待としては大きく伸びてほしいし、業界のプレーヤーとしては、そうなるように仕掛けていかなければならないとも考えている。
ただ、客観的に見て、市場が一気に跳ね上がる要因があるとは考えづらい。
夏季の猛暑は今後も続くと予想され、一定の需要は見込める。ただ、それ以外の、爆発的な需要を生み出す要素がないとなると、市場全体の成長率は引き続き鈍化していくだろうし、横ばい傾向になっていくのではないか。
昨年は、浄水型サーバーを各社が展開したこともあり、浄水にシフトする顧客が多かった。
ただ、ビジネス面で言うと、水を製造するメーカーの利益率は、宅配水の方が高い。宅配水の受注が増えれば、工場の稼働にも直結する。
各社とも、利益の柱である宅配水を極力推し進めようとする動きを強めている。コスト構造の面での優位性から、宅配水への回帰と固定化を図る流れが、市場全体でみられるようになっている。
AIと未来の営業組織
ーークリクラが他社との間で差別化を図るための戦略は。
われわれは単なる宅配水メーカーで終わるつもりはない。市場全体が頭打ちになるからこそ、既存顧客への付加価値の提供がより重要になる。
クリクラの顧客に対する、人気メーカーのリカバリーウエアやドライヤーなどの、水以外の商品のクロスセルには引き続き注力しており、成果も出ている。
水の販売にとどまらず、顧客の生活全体を豊かにする、製品やサービスを提供することを通して、宅配水事業の収益基盤をより強固にしていく。
宅配水にとどまらない
ーー今後の事業運営において、AIはどのように活用していくのか。
AIは、ルーティンワークの効率化に不可欠だ。
現在も、配送ルートの最適化に使ったり、コールセンター業務で使ったり、活用を進めている。今後は、AIの活用の幅を広げていきたい。管理部門などのバックオフィスを、AI活用により劇的にスリム化するといった、大胆な変革を行っていくことも必要だと考えている。
AIが進化しても、顧客との信頼関係の構築や、細やかなサービス提供といった「フィジカルな部分」は残る。
われわれの戦略は、若手社員に短期間で高い営業能力を身につけさせ、彼らにその力を最大限に発揮させられるような「仕組み」を整えることだ。
人材の流動性を恐れず、むしろその成長スピードを企業の力に変える。それが、ナックが目指す未来志向の営業組織のあり方だ。
