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2024.02.02

連載

専門家

【有識者に聞く!電子帳簿保存法の基本解説】第二回 電子帳簿法とはそもそも何か



前回は、電子帳簿保存法の概要について、①電子帳簿等保存②スキャナ保存③電子取引データ保存の3つの保存方法に分けて解説した。今回は電子帳簿保存法に加えて、昨年10月に開始したインボイス制度も踏まえ、EC・物販事業者の請求業務で発生している現状の課題や注意点をお伝えしたい。

また、それらを踏まえた上で、長期的な目線で、法制度をきっかけとしたバックオフィスの業務効率化が必要な理由についてお伝えする。



紙と電子の混在により、業務が煩雑に


2023年10月に、インボイス制度が開始された。仕入税額控除の手続きには、適格請求書発行事業者から発行される「適格請求書(インボイス)」が必要になるという、消費税法上の制度である。したがって、商品の買い手が仕入税額控除を受けるには、これまでの請求書の形式とは異なる、決められた要件を満たしたインボイスを取引先から発行してもらう必要がある。

受領した請求書がインボイスか否か、受領側に判定が求められるなど、請求業務が煩雑化する懸念が多い法制度であったため、この機会に自社の請求業務を見直し、請求書の送付や受領をぺーパレス化した企業も多くある。

しかし、自社で完結できる部分は電子化できたとしても、取引先に対して、紙の請求書を電子に変更してほしいなどの依頼のハードルが高く、郵送による紙の請求書送付・受領が、一定程度残ってしまっている企業も見受けられる。結果、電子と紙の請求書が混在することで、余計に運用が複雑になり、業務コスト・人件費が増えているというケースもあるようだ。

この場合は、電子帳簿保存法の②スキャナ保存に沿う形で、紙で届いたものは自社でスキャンして電子化、内容はOCRで読み取って手入力をなくす、などの対応ができると負担を軽減できるだろう。


保管すべき書類の増加

また、インボイス制度で負担が増えたとよく聞くのが、書類(インボイス)の保存枚数である。物販でよくあるケースとして、納品伝票単位で税計算を行う場合は、納品書ごとにインボイスの発行が必要だ。また、クレジットカード決済・代引きの場合もカード利用明細や代引きの伝票ではインボイスとして認められないため、別途インボイスを発行・保存する必要がある。さらにインボイス制度上、法人は受け取った証憑と、発行した証憑、どちらも原則7年間保存しなけければならない。

よって、紙で運用している事業者は、保存書類の枚数が以前に比べて増え、管理コストに悩まされているという声もよく聞く。


従量課金制の保管サービスによるコスト

インボイス制度施行後、複数のEC事業者の方々に話を聞いたところ、ECカートとは別に、電子帳簿保存法に対応するためのクラウドサービスやシステムを入れている企業があるようだが、従量課金制によってコストが膨らんでいるケースに注意が必要だ。

というのも、従量課金の場合、保管期間とされる7年間の間に保管すべき書類が累積し、想定よりも利用料が上がっている、というケースがあるからだ。とある企業で、7年後のサービス利用料を計算したところ、初月は月額2.2万円だったところ、初月に保管した書類の保管期間が終了する7年後には月額15万円に膨れてしまう、ということが分かったケースがあった。従量課金は、多くのサービスで導入されているシステムである。そのため、証憑保存のサービスを導入する際は、将来的なコストまでシミュレーションし、予算的に問題ないかを一度確認してほしい。

それでも、法制度対応を機にバックオフィスを効率化すべき理由

数年~10年くらいの将来を見据えたとき、BtoB物販事業者の置かれている環境は厳しくなると思われる。各地の紛争や戦争を発端とした材料費や燃料費の高騰、物流2024年問題による物流費の高騰、昨年末に行われた郵便料金の値上げ見通しなど、粗利を圧迫するコスト構造になってきている。さらに少子化により、あらゆる事業領域で新卒・中途の採用がしづらくなっており、とくにバックオフィスは社員の退社・育児休暇などの人の入れ替わりも激しく、回らなくなるケースも増えてきて、安定的に業務を回していくことがより難しくなっている。

読者の皆様には、経営上、利益を保ちつつ安定して業務を保つためにも、地味ではあるが「バックオフィス業務を少人数でも回せるシンプルなフローと体制作り」を必須課題として取り組んでいただきたい。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応は、シンプルな業務フローを作る最大のチャンスでもある。

実際に、電子帳簿保存法やインボイス制度対応をきっかけに請求業務のシステム導入を進め、紙書類の電子化や請求業務のフロー統一を行った結果、業務を効率化できた企業も多く存在する。請求業務が紙ベースの企業は、法制度対応をきっかけにぺーパレス化を進め、安定して業務を回せる、効率的なバックオフィスを目指してほしい。



 次回は電子帳簿保存法に対応した請求業務について、実際の対応方法を解説する。


(つづく)




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