「クリクラ」ブランドで宅配水事業を展開するナックは1月、全国の専任配送員(シャトル)の頂点を決める「シャトルコンテスト2025」を開催した。全国から選りすぐられたファイナリスト9人の中から、見事グランプリに輝いたのは、直営営業部首都圏 第1エリア千葉営業所の会津夏生(あいづ・なつき)氏だ。約14年にわたり千葉県八千代市を中心にハンドルを握り続ける会津氏。彼の姿勢はどこまでも謙虚で、顧客への誠実さに満ちている。「日々自分自身に、『車は凶器、無事故無違反』と唱え、安全に商品を配送することを心掛けている」と話す会津氏に、顧客との信頼構築の極意を聞いた。
「無事故」を支える心の標語
──グランプリ受賞、おめでとうございます。まずは率直な感想をお聞かせください。
正直なところ、本選に残ったメンバーの技術や知識に大きな差はありませんでした。勝因を挙げるなら、お客さまからの応援投票とコメントによる加点が非常に大きかったと聞いています。
いわば、日頃お伺いしているお客さまに「ナンバーワン」に押し上げていただいたという感覚です。
何よりも「安全運転」です。この仕事は車がなければ成り立ちませんが、一歩間違えれば凶器にもなります。
私は出発時と帰社時に、必ず心の中で復唱している言葉があります。
「車は凶器、無事故無違反」という、自分自身で決めた標語です。
14年も続けていると、どうしても”慣れ”てしまいます。
無事故歴はもう10年を超えますが、一番怖いのは気を抜いた瞬間です。
毎日、自分に言い聞かせることで、運転のプロとしての緊張感を維持しています。
「疲れた顔」はプロ失格
──接客において、特に意識しているポイントはありますか?
「疲れた感じを出さない」ことです。水は重いものですし、夏場は汗もかきます。しかし、お届けにあがる人間がゼイゼイと肩で息をしていたり、疲労が浮かぶ顔で運んでいたりしたら、お客さまは気持ちよく水を受け取ることができません。
自分が逆の立場なら嫌ですから。体調が万全でない日でも、ハツラツとした元気な印象を持っていただけるよう、一軒一軒の玄関先でスイッチを入れています。
──長く同じ地域を担当されていますが、お客さまとの距離感はどう変化しましたか?
現在、八千代市の全域と千葉市の一部を担当しており、以前は月間で850件ほど回っていました。
10年以上続けていると、もはや「配送員と顧客」以上の関係性が生まれます。
2年前に私に子供が生まれたときには、「あの会津君がパパになったか~」としみじみ感慨にふけっていただけたり、「おめでとう!」と喜んでいただいたりしました。
今回のグランプリ受賞についても、公表された当日から、配達がないのにわざわざお客さまからお祝いの電話やメールをたくさんいただきました。
こうした「人の温かさ」に触れられるのが、この仕事の醍醐味です。
──水以外の相談を受けることもあるのでしょうか?
いわゆる「押し売り」は自分の性格上苦手なのですが、雑談の中からニーズを拾うことは大切にしています。
例えば、腰や肩が痛いというお話が出れば、当社で扱うサポーターを提案します。
大切なのは、お客さまが困っているタイミングで、最適な解決策をポッと置くような自然な提案です。
お客さまと私、双方がウィンウィンになれる関係を常に意識しています。
「自由」と「責任」を両立する働き方
──「シャトル」としての働き方について、どのような点にやりがいを感じますか?
一番は、頑張りがダイレクトに収入に反映される点です。
怠ければ下がりますし、工夫して効率を上げれば、その分はお客さまとの対話の時間や自分の時間として還元されます。
配送ルートも自分の裁量で最適化できるため、自由度が高い。もちろんその裏には、すべての責任を自分で負うという覚悟が必要です。
──最近は浄水型サーバーや他社の攻勢も激しいですが、顧客を維持できる秘訣は?
解約の申し出があった際は、必ず理由を丁寧にヒアリングします。
固定費削減が理由であれば致し方ない面もありますが、「ボトルの交換が重い」といった理由であれば、浄水型の「feel free」を案内するなど、自社内で解決できる手段を提示します。
日頃の防災の備えとして「災害時の備蓄になるからボトル型がいい」というお客さまも多いです。
そうした個々のニーズを汲み取ったパーソナルな対応が、離脱を防ぐ鍵になります。
──最後に、会津さんにとっての「配送」とは?
単に水を届けるだけでなく、信頼を届ける仕事です。システムや効率も大事ですが、最後は人対人のつながりです。これからも「車は凶器」という戒めを胸に、お客さまの生活に寄り添い続けていきたいです。
