リポソーム技術を用いたビタミンCサプリメントの先駆け的な商品「Lypo-C(リポシー)」の販売を手掛けるスピック(本社神奈川県)では、年商100億円が射程圏内に入っている。シンガポールに拠点を移し、アジア全域を見据えたグローバルな視点で、未来の健康を提唱する芝田崇行社長に、その戦略と哲学を聞いた。
100億円は通過点
──売り上げ100億円が近づいているが、現在の立ち位置をどう見ているか。
現在の計画では来年か、再来年には100億円の大台が見えてくると予測している。これまでは「Lypo-C Vitamin C+D(リポシー・シープラスディー)」が主力だったが、昨年後半にスキンケア、今年は「Lypo-C Vitamin C+Cera」を投入したことにより、フェーズが変わった。「Lypo-C Vitamin C+D」とともに依然として強い勢いで伸びている。
──好調の要因をどう分析しているか。販路の構成に変化はあるか。
全体として伸びているが、勢いという面ではECがシェアを伸ばしている。
しかし、われわれの根幹はあくまでBtoB、つまり医療現場にある。
医師が現場で何を求め、患者がどう反応しているか。このプロフェッショナルの信頼を勝ち取ることこそが、スピックのユニークネスだ。
──新商品の展開もプロの信頼を起点としているのか。
その通りだ。新商品を一般発売する1~3カ月前には、必ずクリニックなどの専門機関へ先に卸す。
現場の専門家に納得していただき、自信を持って患者に伝えてもらえるか。この第一段階の確信がなければ、その先の一般展開はない。
専門家の生の声を生かし、公式ショップやアマゾン、楽天といったモールへと段階的に広げている。モールは認知獲得やトライアルの場として重要だが、顧客の購入スタイルに合わせた出口を用意している。
10年前の予見
──「リポシー」の認知度は今や美容感度の高い層に完全に定着した。理由はどこにあるのか。
10年以上前、この商品を「リポシー」と命名した際、既に現在の状況をイメージしていた。
リポソームのビタミンCを略せば、誰もが「リポシー」と呼ぶだろうと。カテゴリー名がそのまま商品名になるようなブランディングを狙った。
──近年はリポソームをうたうサプリメントが他社からも多数登場している。競合についてはどう考えているか。
競合とは思っていない。むしろ歓迎している。リポソームという言葉が一般的になれば、われわれが説明する手間が省けるからだ。他社が市場を広げてくれることで、結果的にパイオニアである「リポシー」の認知向上にもつながっている。
ただ、そこには強い問題意識も持っている。安価なリポソーム風の商品が出回り、消費者が、効果がないと失望してしまえば、市場そのものが縮小してしまう。
目に見えない技術だからこそ、「何をもってリポソームと呼べるのか」という基準を提示するフェーズにきている。業界のガイドライン作りや正しい情報のコミュニケーションは、販売者の責任として取り組んでいく。
「どれだけ届くか」へ
──商品ラインアップを急拡大させている意図は。
サプリメントの本質的な価値を「たくさん摂る」ことから「どれだけ届くか」という価値観へシフトさせるためだ。
リポソームはあくまでデリバリー技術の一つ。例えばミネラルの場合、リポソームのカプセルを金属成分が壊してしまうため、我々は「イオン化」という別の技術を用いて「MINERALion(ミネラリオン)」を開発した。
──顧客にはどのような体験を届けていきたいのか。
今年のテーマは「体感(エクスペリエンス)」だ。漫然とサプリを飲むのではなく、自分がどうなりたいかという目的に対して、体がどう反応しているかに耳を傾けてほしい。「C+D」や「C+セラミド」をあえてセットにしたのは、摂取をシンプルにするためだ。
目的が明確になれば、従来のCを飲む必要はなくなり、上位互換のもの一つで済む。サプリメントにおいて、自分の体の医者は自分自身だ。その選択を支えるブランドでありたい。
次世代の「自分ごと」作る
──芝田社長は現在シンガポールを拠点にしているが、グローバル展開の展望は。
ASEAN市場の成長率は世界でも圧倒的だ。特に健康長寿の分野において、日本、韓国、台湾、シンガポールといった東アジア勢は世界のトップを走っている。治療医療は欧米が主役かもしれないが、予防や健康の分野ではアジアの出番だ。日本で培った健康習慣や知見を、経済成長著しいASEAN諸国へ展開しない理由はない。
