DCアーキテクト(本社東京都、鈴木幸治社長)の薬事法広告研究所では、通販の広告などについて、薬機法・景表法・健康増進法などに基づきコンサルティングするサービスを提供している。薬事法広告研究所の稲留万希子代表は、「健康食品の広告・販促活動において、各種法令への対応は避けて通れない。現場のリアルな声に耳を傾けながら、実践的な知識とツールを味方につけることで、”魅せる表現”と”法令順守”を両立してほしい」と語る。広告規制動向について、稲留代表に話を聞いた。
──特商法の検討会では、定期購入トラブルに関して、委員から指摘されることが多かった。定期購入サービスを提供する健康食品事業者は多い。改めて事業者が注意すべき点について教えてほしい。
トラブルの根底にあるのは、「定期解約が簡単にできない」「1回限りの単品購入だと思っていた」といった、顧客との認識の違いだ。そうしたギャップが生まれないか、今一度ルールや設計を確認してほしい。
具体的な対策として一番重要なことは、特商法のルールに則った、広告や最終確認画面での表記を行うことだ。「定期購入である旨」や、「分量(□ミリリットル、△個入りなど、表示義務は最終確認画面のみ)」「総額(送料込み)」「支払いタイミング」「解約条件」などを明記する必要がある。
ダークパターン拡大
──特商法の検討会では、ダークパターン広告の規制に関する議論も出ているが。
悪質なダークパターン広告は拡大していると考えられる。
ダークパターンとは、「消費者の合理的判断を妨げる設計」で、(1)偽の緊急性(「あと□分で終了」といったカウントダウン)(2)情報非対称(有利な条件だけを強調し、不利益となる部分は隠す)(3)隠れコスト(購入の最終確認画面で手数料を加算する)(4)架空価格(実績や根拠のない「通常価格」で安さを演出する)(5)解約妨害(電話がつながらないなど解約できない)─の5大類型に分類できる。
景表法や特商法の摘発リスクに直結する要素と言える。
ダークパターンは事例の全てが違反になるわけではないが、景表法だけでなく特商法でも違反と判断される場合がある。
体験談においては、薬機法にも抵触しないように注意が必要だ。
軽い気持ちで実行したことでも、摘発されるリスクがある。より一層注意深く運用に取り組んでほしい。
ルールを順守しながら、効果的な広告戦略を立てる必要がある。
大きな転換期も
──景表法についてはどうか。2025年の景表法関連の動きで、大きな転換点と成り得るポイントを挙げるとすると、消費者庁が2023年に行った、「糖質カット炊飯器」についての措置命令の件がある。この件で東京地方裁判所は2025年7月、違法として取り消す判決を下した。裁判所が景表法の措置命令を取り消す判決を下すのは初めてのことだった。
これまで消費者庁は”科学的・合理的根拠”を絶対的な基準としてきた一方で、この判決では、司法が「広告の文脈上、消費者がどう受け取るか」という表現解釈を重視したと言える。
仮に最高裁でも同様の判断が維持された場合、行政側は今後の処分において、解釈の分かれる表現への措置命令に慎重にならざるを得ないのではないかと考えられる。
事業者にとっては表現の選択肢が広がる可能性がある。
一方で、消費者の誤認を誘発するような、ギリギリを攻める広告が増えかねない。今後の最高裁での判決を注視したい。
景表法の難しさは、〝事案ごと〟に判断される点にある。過去の事例を参考にしつつ、グレーゾーンの見極め方や、売り上げを落とさない表現設計を考えていく必要がある。
