消費者庁は2024年1月、消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会を開催した。検討テーマとしては、(1)消費者が関わる取引を幅広く規律する、消費者取引全体の法制度の在り方(2)デジタル化による技術の進展が消費者の関わる取引環境に与える影響についての基本的な考え方(3)ハードロー的手法とソフトロー的手法、民事・行政・刑事法規定など種々の手法をコーディネートした実行性の高い規律の在り方─を挙げている。超高齢化やデジタル化の進展などによる、消費者を取り巻く取引環境の変化に対応していくとしている。
専門調査会の座長は、東京大学大学院法学政治学研究科の沖野眞已教授。10人体制となっている。
消費者庁では、消費者契約法や特定商取引法などは、これまで改正を繰り返してきた。しかし、高齢化やデジタル化の進展により消費者を取り巻く環境が日々変化している中、個別の課題ごとに改正を行っていては、消費者取引の安心・安全を実現するのは難しいとしていた。
2022年の消費者契約法の改正時には、衆・参両院で「既存の枠組みに捉われない抜本かつ網羅的なルール設定の在り方について検討を開始すること」という付帯決議がなされた。
これを受け2022年8月から「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会」を開始。2023年6月までに15回の討議を行い、専門調査会の検討テーマがまとめられた。
1月に開催された専門調査会では、有識者ヒアリングとして、龍谷大学法学部のカライスコス・アントニオオス教授が「EC消費者法の展開と展望」について報告。EC消費者法の近年の動向を紹介した。
近年の動向として、(1)消費者の集団的保護手段として、従来の差止めに加え、集団的な被害回復を追加したこと(2)オンラインプラットフォームなどの仲介者に、規模や役割に応じて異なる義務を課していること(3)ダークパターンや隠れた広告などについて見直しを行っていること(4)AIを含めて、デジタルトランスフォーメーションへの移行を進めていること─などを挙げていた。
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