ショッピング専門チャンネル「ショップチャンネル」を運営するジュピターショップチャンネル(本社東京都、小川吉宏社長)が2期連続で過去最高売上高を更新した。2026年3月期の連結売上高は1.1%増の1700億円だった。テレビ・デジタル・リアルの融合、エンターテインメントとしてのショッピングの磨き上げなどが奏功した。小川社長に業績好調の要因やAI活用、今後の展望などを聞いた。
──前期は業績が好調だったと思う。振り返ってほしい。
前期はおかげさまで2期連続で過去最高売上高を更新できた。ただ、当社としては数字を必死に追いかけたというよりは、ブランドプロミスである「心おどる、瞬間を。」をお客さまにいかに提供できるかを突き詰めてきた結果、数字も伸びたと捉えている。
具体的に申し上げると、2024年度から「テレビ通販事業」から、「テレビ・デジタル・リアルを連携させたショッピングエンターテインメント事業」への変革を進めているが、これをお客さまが楽しんでいただけたのだと思う。単にテレビで見たものをスマホで買うという段階を超えて、お客さまがテレビを見ながら、あるいは見た後に、デジタルのコンテンツを能動的に楽しんで、あるいは紙媒体のカタログ誌も眺めながら、LINEでメッセージを受け取られるなど、全てのタッチポイントが緩やかにつながっているという状況を作れている。
──そのデジタル戦略の火付け役の一つとなっているのが、スタッフ自ら情報を発信する「SHOP CHANNEL PEOPLE(ショップチャンネルピープル)」か?
その認識で合っている。「SHOP CHANNEL PEOPLE」は出演ゲスト、ブランドスタッフ、ショップチャンネルの社員やキャストが、スタイリングや商品に関する写真やショート動画を投稿し、リアルな声を発信するサービスだ。昨年度はアパレルだけでなく、ライフスタイル全般にカテゴリーを広げ、コンテンツを大幅に拡充した。現在、参加社員は約250人にまで増えている。
──インスタグラムのようなUIで、社員が本当に楽しそうに商品を紹介している。顧客にとっては、友人のアドバイスに近い感覚のように感じる。
番組だと、どうしても「商品の良さを伝えなければいけない」という企業側の視点が強くなりがちだが、この投稿は社員自身が気に入ったものを選んで、自分の言葉で発信している。この「SHOP CHANNEL PEOPLE」経由のEC売上高は、年々増加傾向にある。PV数も前年比24%増の伸長となった。
──1月から「開局30周年企画」がスタートしたと思う。顧客からの反応はどうか?
確かに30周年企画も後半を盛り上げてくれた要因だと認識している。前年との比較で言うと、ジュエリー、コスメ・ヘルスケア、アパレルの反応が好調だった。
ジュエリーに関しては、地金系の販売が良かった。資産目的で購入するなら、延べ棒を買うと思うので、やはり資産目的だけでなく、デザイン性も重視してアクセサリーとして購入する人が多かったのだと推測している。
バリエーションを拡充
──業界を見ると、複数社が総合通販から専門型通販に移行していく方針を掲げている。貴社はどのように考えているか?
当社はショッピングエンターテインメント性を高めるため、むしろバリエーションを広げようとしている。旅行商材や新しい切り口の商品の販売に取り組んでいる。
お客さまが見て「あ、こんなの売ってるんだ」という驚きがないとつまらないと思う。損得だけではなく、そのようなワクワクする、サプライズがある商品・番組がないと、お客さまは飽きてしまうと考えている。
コストもかかり、在庫リスクも高まると思うが、縮小均衡にはしたくない。商品はさらに増やしていく。
面白い商品と言えば、録音できるボールペンなどがある。このほか、ニッチだと思われるかもしれないが、バッグの「肩紐(ストラップ)」だけを販売している商品もあり好評だ。肩紐を付け替えるとまるで違うバッグになる。
最近よく見つけてきたなと驚いたのが家系図を作成代行する「自分のルーツを辿り 家族の歴史に触れる 本格家系図セット お申込みキット」だ。販売価格は54万7800円と安くないと思うが、毎回好調だった。
一気に3215万世帯にリーチできるテレビの力は絶大だ。自分のルーツを知り、記録に残したいという願いを持つお客さまが、想像以上にいらっしゃった。購入に関係なく、番組を見ているだけでも面白い。テレビでしっかりとストーリーを説明すれば、ニッチな商品も深く刺さることを表している。
──最近、コスト高に悩んでいる企業も多いと思う。貴社はどのように対策しているのか?
物流費、資材など、ほぼ全てのコストが上がっている。当社の企業努力で吸収できるものもあれば、売価に転嫁させていただく場合もある。セット組みを工夫したり、あとは商品自体を変更することもある。
──EC・通販業界ではAI活用も進んでいる。貴社の状況は?
販売計画や番組編成、コールセンターの人員配置計画などにおいてAIを活用している。番組編成には、今まで人間が行っていた暗黙知やパターンを学習させた。AIを活用したことで、人間では時間的に限りがある編成パターンを考えられるようになった。
──今後の展望は?
今年度はリアル面もより強化していこうと思っている。来年2月には東京国際フォーラムでの大型ファンイベントも控えている。デジタルが当たり前になった今だからこそ、お客さまに”直接会える、体験できる価値”を提供したい。キャストやゲストとの交流、実際に商品に触れる場を創出していく。
