治療食、介護食の通販サイトを運営するヘルシーネットワーク(本社東京都、黒田賢社長)は、2025年9月期売上高が前期並みの34億5000万円となった。物価高の影響で塩分やタンパク質の制限食の利用が伸び悩む一方、病院の医師や管理栄養士との連携強化、少量・多品種を一度に購入できる利便性の訴求で前年水準を維持した。前期の振り返りと今期の取り組みなどについて、多和田幸広執行役員に聞いた。
物価高で制限食の販売減少
──前期の業績要因は。
2025年9月期は、物価高の影響を色濃く受けた1年だった。継続的な食事療法が必要な人向けの塩分制限食や低タンパク食について、生活防衛意識の高まりから買い控えたり、薬のみの治療に切り替えたりする動きが目立った。「塩分控えめくらいなら自分で調整できる」と考える糖尿病患者が多かったことも背景にある。
以前は透析治療に入るのを遅らせるための低タンパク食が売り上げの柱だったが、治療方針と情勢の変化を受けて需要が減少した。一方で、自力での調理が困難な層に向けた「やわらか食(介護食)」や「濃厚流動食」が売り上げの上位にシフトしている。
──今期の取り組みは。
変化する状況を受けて、これまでと同様に病院の医師や管理栄養士との連携に注力している。退院後の患者が再入院するリスクを減らす取り組みを進めている。
退院後1週間は、誤嚥性肺炎や脱水、栄養不良による転倒・骨折のリスクが極めて高い。同じ疾患で短期間に再入院すると病院側の診療報酬が減額されるため、医療現場にとっても退院後の栄養管理は切実な課題だ。そこで当社は、退院後7日間に必要な「誤嚥予防・栄養補給セット」などを企画し、医師や管理栄養士から患者へ直接紹介してもらう流れを作っている。
自社サイト「栄養指導ナビ」では、若手管理栄養士の教育資料にもなる食事療法セミナーなどの動画を配信。単に商品を売るだけでなく、医療従事者の指導を後押しするパートナーとしての信頼関係を構築している。
大手のEC撤退で存在感高め
──継続してもらうためのポイントは。
当社の取り扱い商品は非常にニッチだ。介護食や療養食を必要とする個人が、メーカー各社のサイトから購入すると、ケース単位になってしまい、個別かつ少量での購入が難しい。
当社は大手から専門メーカーまで幅広い商品を網羅し、1個単位や少量アソートで購入できる体制を整えている。近年、大手食品メーカーが自社ECサイトから撤退・集約する動きが相次いでおり、ワンストップで買える当社の存在価値はむしろ高まっているとみている。
カスタマーサポートにおいても、電話口で賞味期限や細かな栄養成分に回答できる体制で、大手にはない安心感が継続につながっている。
──物価高への対応は。
物流費や人件費の高騰に伴い、2024年4月からは送料を1100円に改定した。一時的な離脱はあったものの、適切な利益を確保しなければサービス自体を継続できない。
冷凍弁当のまとめ買い時に生じる、冷凍庫のスペースの課題に対しては、サークランド社と提携した冷凍庫レンタルサービスを、月額770円で提案。チラシの同梱や病院配布で案内しており、継続購入時のハードルを下げている。
──今期の計画は。
今期は無理に売上規模を追わず、確実に利益を残せる体質作りを最優先する。
医療従事者を通じた紹介ルートを一層深掘りし、真に食事療法を必要とする顧客へアプローチしていく。新たな販路の開拓も検討を進めている。外部環境は厳しいが、医療現場と在宅をつなぐ専門ECとしてのポジションを堅持し、堅実な成長を目指す。
