ダスキンは2025年3月期まで10年間に渡って取り組んできた長期戦略「ONE DUSKIN」を終え、新たなビジョンやパーパスを策定し、長期経営戦略「Do-Connect」をスタートさせている。3つの「シン化」を据え、訪販グループでは4月からは新たにタグライン「くらしに、新しいつながりを。」を策定した。訪問販売による対面とデジタルチャネルを組み合わせることで新たな顧客接点につなげる。大久保社長に長期経営戦略の方向性に加えて、現在の取り組み、今後の事業戦略について聞いた。
長期経営戦略「Do-Connect」を策定
──長期経営戦略「Do-Connect」はどのような戦略なのか?
当社は2025年3月期まで10年間の長期戦略「ONE DUSKIN」を終え、2026年3月期から長期経営戦略「Do-Connect」を進めている。
「ONE DUSKIN」の取り組みの一例としてコロナ禍では、ワクチン接種会場の設営や衛生管理などにおいて、クリーンサービス事業(清掃・衛生用品のレンタルと販売)とサービスマスター事業(プロのお掃除サービス)、レントオール事業(イベント総合サポートと各種用品のレンタル)といった複数の事業が連携し、単独事業では提供できない新たな価値を創出することができた。
「Do-Connect」は「ONE DUSKIN」をベースにした。パーパス(社会的存在意義)として「人に社会に寄り添い、安心と喜びのある豊かな明日を創造します。」や、ビジョン(担うべき役割)として「人と人、人と社会、人と明日をつなぐ笑顔の環を届けます。」を策定し、2024年11月に開催した創業60周年式典で発表した。
当社はお客さまや地域社会とのつながりの中で事業を展開しており、そのつながりをより大切にしていきたいという思いを込めた。
──「Do-Connect」の初年度の2026年3月期については?
2026年3月期を初年度とする「中期経営方針2028」を元に事業運営を進めている。新たな事業への「新化」、周辺事業への「進化」、既存事業の「深化」という3つの「シン化」に加えて、それらを支える「経営基盤の強化」を推進している。
全社で掲げたパーパスやビジョンをもとに、各グループ、事業ごとにもビジョンを策定している。また、販売員も含めた社員一人一人にも、それぞれどのような「シン化」を目指すのかを考えてもらっている。
訪販グループのビジョンは「新しいつながりで、暮らしに喜びを。」とし、従来の衛生、ワークライフサポート、シニアサポートに加え、新たにハウスメンテナンスを加えた4領域に力を注いでいる。
領域拡張戦略として進めているハウスメンテナンス領域では、2026年1月よりレスキューサービス事業(鍵の駆けつけサービス)のフランチャイズ展開を開始した。2028年3月期までに全国100拠点以上の展開を目指している。さらに、試験的に住宅設備機器として給湯器の交換なども始めている。
一方で、新たな価値創造に向けた取り組みとして、2025年7月に冷凍宅配弁当のナッシュと資本業務提携した。
デジタルチャネル/施策で接点強化
──チャネル戦略については?
顧客との対面によるリアル接点と対面時以外のデジタル接点の両輪による新規契約の獲得と既存顧客との関係性の強化を掲げている。
2026年3月末時点の家庭市場の契約顧客数約384万世帯のうち、ウェブ会員サイト「DDuet(ディーデュエット)」の会員数は約207万人(26年6月末時点)の登録がある。
一般的なECではオンラインが主な顧客接点となるが、当社は定期訪問による顧客とのコミュニケーションを基盤に、デジタルチャネルを組み合わせた顧客接点を持っていることが強みだ。オンラインを通じて生活情報やお買い得情報を提供し、お客様との接点を強化している。メルマガは基本2週間に1回のペースで、直近1年間の平均開封率は41.6%だ。
4週間に一度の定期訪問に加え、オンラインでの接点も強化することで、顧客の利便性向上と関係強化の両立を図っていきたい。
AI、DX戦略を加速
──DX戦略については?
「効率化」「事業への活用」「新たな事業をデジタルによって展開」という三つの段階がある。
効率化の部分では、AI活用を進めている。当社では2026年3月期からAIの活用に関する基準整備を進めている。
現在の活用事例としては、お客さま宅で一部の住宅設備機器の品番を撮影したものをAIが判定し、その場で見積りをするなどの取り組みを始めている。また、ターミニックス事業(害虫獣の駆除と総合衛生管理)において、知らない虫に遭遇した時に画像を撮って読み込ませるだけで、簡単に「虫の種類」をAIが判定してくれるアプリ「虫みっけ!」を開始している。
──デジタル人材の育成を進めている。
デジタル人材の育成として、デジタル技術を活用した業務改革による生産性向上と顧客との関係強化による新たな顧客価値の創造を目指している。
各部門から選抜した社員は、AI先進国の米国シリコンバレーやニューヨーク、今年2月にはエストニアを訪問して知見を広げ、各部門でDX推進のリーダーとして活躍できる人材の育成を図っている。一方で、AI活用を推進する人材の育成も進めており、この1年間で各部門から計180人を選抜した。
最大の目標は、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス=CX)の最大化を図ることだ。チャネル戦略でのDXを図るほか、AIで効率化できた時間をお客さまとの対話や訪問に充てることもできる。
営業専任組織に成果
──新規顧客の契約を目指すための「家庭用営業専任組織」については?
これまで共働き世帯の増加による在宅率の低下やオートロックマンションの増加を理由に訪問での営業活動が難しいと考えていた。しかし、実際に取り組む中で、まだ十分な可能性があると感じている。
本部から20人を営業専任の特命担当として各地域に配置している。特命担当は営業経験と実績がある人材で、地域で活動すると同時に、現場販売員との同行営業も担っている。営業専任組織による一定の成果が出たので、そのノウハウを既存販売員の活動にも広げていく方針だ。
──訪販グループは4月から新たなタグラインを設定した。
訪販グループのビジョンを体現したタグライン「くらしに、新しいつながりを。」に刷新した。商品・サービスの提供にとどまらず、お客さまとの関係性の広がりや新たな価値創出への挑戦の意味を込めた。一人一人の行動が事業のありたい姿につながり、最終的には全社のビジョンやパーパスの実現をしていきたい。
