白アリ防除施工のアサンテでは2022年から2023年にかけて、広島や四国などの西日本で、営業拠点の新設を進めている。これまで主力としていた関東に加えて、白アリの活動が活発と言われる西日本でも、顧客開拓を活発化させている。同社の宮内征社長に、2023年3月期の営業状況や、新営業拠点の進捗などについて聞いた。
営業活発も物価高が影響
─2023年3月期の業績を振り返ってもらいたい
2023年3月期の売上高は、前期比3.2%増の141億4000万円だった。営業利益は4.2%増の13億8000万円となった。
コロナの影響は引き続き継続していたが、2020年や2021年の状況とは違った。対面営業に対する警戒感は減少した。
一方で、当社の社員や社員の家族がコロナに感染することも増えた。営業員だけでなく、施工スタッフがコロナに感染すると、工事が出来なくなる。その結果、売り上げが下がるという現象はあった。
2022年は、アフターコロナに差し掛かってきたことで、経済が活性化するという側面はあった。一方で、原料や資材の価格高騰が影響した。施工や営業に使用する車のガソリンの価格が上ったことで、利益を圧迫した側面はある。
日用品など、さまざまなものの価格が上がっていることで、お客さまの財布のひもが固くなっているとも捉えている。
当社の場合、白アリの防除施工については、「被害があれば対策を行う」というお客さまが多い。一方で、オプションの商品に関しては「今回はやめておく」という判断をする人が、少なからずいる。地震対策については、最近災害が多いため、備えとして検討してくださるお客さまが多くなっている。これは、白アリ防除施工と同じで、景気の良しあしとは関係なく需要があるサービスだからだ。商品の強みだと考えている。
効率性を重視した営業へ
─アフターコロナになるにつれて、「人材不足」という新たな課題も出てきているが?
「人材の確保」については、当社の重要なテーマだ。特にここ数年は、超売り手市場となっている。就労環境の整備や、賃金の面での施策を特に行っている。
当社では2023年7月から、商品の一部価格の改定を実施した。値上げによって得られるメリットは、人件費などに充てんしている。
人材不足への対策として、中長期的には、一人当たりの生産性を高めて省人化していくことが必要だと考えている。
例えば、施工については、従来のやり方を見直して、より効率的な施工方法を探っていく。作業工程を短縮していくことも検討している。
一方で、お客さま宅を直接訪問してニーズを探ることは、決して効率がいいとは言えない。ただ、当社は、中高年のお客さまも多く、訪問販売だからこそできる手厚いサービスが、関係構築につながっている。
訪問販売に加えて、お客さまの方からお声がけいただけるようなニーズの掘り起こしが必要だと考えている。そのためには、JAをはじめとする提携先を増やして、新規のお客さまの紹介をいただく機会を増やしたい。
─2022年は、西日本に新たな営業拠点を開設したと聞くが
昨年は高知・四万十、岡山、今年は広島に新たな営業所を設けた。現在、28都道府県に、81ヵ所の営業所を構えている。
西日本では、テレビやラジオ、ウェブでの大規模な広告宣伝も行っており、業績はおおむね順調だ。現地ではまだまだ当社の知名度は高くないが、白アリによる住宅の被害は東日本よりも大きいと言われている。
今後はいかにして、白アリ防除のニーズを顕在化させていくかが重要だ。
─2024年3月期に向けた抱負を聞かせてほしい
2024年3月期に向けての戦略としては、五つの重点項目を掲げている。まずは、「営業推進の基盤・体制の強化」だ。当社がメインで提携しているJAのような提携先を増やしていく。2022年は、工務店や官公庁の福利厚生施設など、新規の提携先を90社以上増やした。提携先を増やしていくことで、新規顧客の獲得につなげたい。
「生産性の向上」や「お客さま視点に立ったサービスの拡充」といったことも、方向性として掲げている。分かりやすい説明を行い、デジタルツールを使って効率的に生産性を上げていく。さらに、お客さまのニーズに応え、より一層、満足いただけるサービスの提供を目指していく。高付加価値サービスの設計とアフターサービスのさらなる充実を進める。
「人的資本の開発・活用」として、社員のウェルビーイング向上の方針も掲げている。賃金を高めることももちろん重要だが、社員一人一人が、「自分たちがいかに社会的に意義のある仕事をしているか」を再認識してくれることも大事だ。社員のやりがいを醸成する取り組みを行っていく。