通販のコンサルティングなどを手掛ける売れるネット広告社はこのほど、広告代理店のグルプス(本社愛知県、北川雅人社長)の株式を取得し、子会社化した。売れるネット広告社ではグルプスの持つ運用型広告のノウハウなどを吸収していくという。今後、これまで得意としてきた、通販のダイレクトマーケティングのノウハウを武器に、20の領域へと拡大していく方針だとしている。売れるネット広告社の加藤公一レオ社長と、グルプスの北川雅人社長に、今後の事業戦略について聞いた。
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20以上をカバーへ
─グルプスを子会社化した目的を聞きたい。加藤:グルプスは、通販以外の、美容業界の広告運用のノウハウを多く持っており、その強みを吸収したいと考えた。
売れるネット広告社はこれまで、ネット通販のランディングページ(LP)の制作やコンサルティング、運用型広告・純広告の運用などを14年以上行ってきた。
2023年10月に東証グロース市場に上場したが、その際に、「世界中をダイレクトマーケティングだらけにしていく」というスローガンを立てた。我々がこれまで強みとしていた「通販」の領域以外に、「CRM支援」や「モール領域支援」「人材紹介」といった20以上の領域をカバーしていきたいと考えている。
グルプスは、通販の運用型広告を得意としているほか、美容サロンなどの美容業界向け広告運用のノウハウを持っている。そのノウハウを共有したいと考え、子会社化に向けた協議を進めた。
─グルプスにとって、売れるネット広告社の傘下となるメリットは。
北川:当社のクライアントの通販企業が、厳しい広告市場でまっとうに戦っていくために、大きなシナジーを生み出せると考えたからだ。
グルプスはこれまで10年以上、マーケティングや広告運用の領域で仕事をしてきた。ここ数年で課題となっているのが、「広告費の高騰」「競合の増加」だ。
違法な広告で攻める競合が増え、CPOが高まり続ける中で、まっとうな企業がまっとうに戦えない状況になりつつある。
そんな中で、売れるネット広告社に参画すれば、大きなシナジーを生み出せると考えた。
─ステマ規制などの行政の執行強化と、広告コストの高騰について、どう思うか。
加藤:行政の執行強化は、我々のようなクリーンな事業者にとってメリットが大きい。「正直者が光を見る」市場に変わっていく流れだと考えている。
ここ数年、「これを飲んだら1週間で20キロ痩せる」などのブラックな広告を打つ事業者の商品が売れて儲かるという流れができていた。法律を遵守し、無茶な効果効能を訴求しない事業者にとっては、正直者がバカを見るような状況だった。
ここ数年で、特定商取引法や景品表示法の規制の強化、ステマ規制の導入など、行政が執行力を強化している。これは、我々にとって大きなメリットだ。
広告コストの高騰がここ数年叫ばれている。なぜコストが高騰しているかといえば、プレーヤーが増加していたからだ。特に、無茶な効果効能を訴求する事業者が、ネット上の広告枠を押さえてしまっていたことが、広告費の高騰につながっていたと考えている。
行政が規制を強化してくれていることで、ブラックな企業の広告が減り、広告コストが低下していくことが予想される。
枠の取り合いは終焉
─自らD2C事業を展開する北川氏はどのように考えるか。
北川:ここ5年程、ウェブ広告のCPA(顧客獲得単価)が高騰していたが、広告枠の取り合いが起きていたからだ。昨年、それは終焉を迎えたと考えている。
広告代理店事業を運営する中で、自社の製品も含めたさまざまな広告を見る中で、徐々に、「本物」の製品しか残らなくなってきていると感じるからだ。
これまで、無茶な効果効能を訴求するブラックな広告は、いわば参入障壁が低かった。ブラックな広告を打てば、商品が売れる市場があったからだ。それが徐々に、まっとうな広告で勝負しつつ、製品力がしっかりしていて、ユーザーもリピートする「本物」の商品だけが残る市場に変わりつつある。
我々広告代理店としては、「本物」しか残らない市場を作っていくべきだと考えている。
健全なマーケッターが、適正なCPAで戦えるプラットフォームを作っていく必要がある。
─売れるネット広告社では、どのように多くの領域での展開を目指すのか。
加藤:すでにある領域でノウハウを持っている会社をM&Aしていくことが、効率的だと考えている。グルプスもその一つだ。売れるネット広告社と同規模の会社に、グループにジョインしてもらいたい。
─特に興味のある領域は。
加藤:海外に果敢にチャレンジしたい。特に、今は円安の状況で、日本の商品やサービスを海外に売りやすい状況があると考えている。
北川:私は、ライブコマ―スの領域でM&Aを推し進めるべきだと考えている。
日本は米国や中国、ベトナムなどに比べて、ライブコマースの領域が圧倒的に送れている。
ライブコマースと海外進出の領域をカバーすれば、世界にチャレンジしやすいのではないかと考えている。