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2023.11.26

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アスクル 吉岡晃社長「顧客の支持を得るため“変わり続ける”」【40周年記念インタビュー】 [2/3]

アスクルのカタログ創刊号を持つ吉岡晃社長

危機感からBtoC開始


――アスクルとしての変化は?


われわれは「明日届ける」というプラットフォームに商材を増やしていくか、もしくはターゲットを広げるか、この2つの軸が成長のベースとなる。

「中小企業に大企業並みのサービスを」ということでアスクルの事業は始まった。商材は文房具から家具、日用品、飲料などに広がり、注射器や工具といった専門性の高い商材も取り扱うようになった。ボリュームが多くなると大企業からのニーズも増えて、大企業向けのサービスも展開するようになった。

――BtoCに参入したことも大きな挑戦だったと思う。

2012年にヤフーと「LOHACO」を立ち上げた。当時、大きなジレンマがあった。お客さまは確実にネットへ移行し、競合企業もネット注文に対応し、明日届くのも珍しくないサービスになってきた。

ネット以前、この業界はこの企業・サービスだよねという業種業界の垣根があった。しかし、ネットには、その線引きや垣根がない。ネットで商品が並んでいれば、誰でも買える。お客さまにとっては業種業界の垣根は関係なくなった。同じものを買うならリーズナブルで、早く届くサービスを選ぶ。

こうなってくるとネットの中では、B(法人)もC(個人)も関係ない。ひょっとしたらお客さまにとっては、メーカーも卸も流通も垣根がない状態になっている。ネット上で勝てるビジネスモデルや仕事の仕方、サービスに変わっていかないと、われわれは立ち行かないと考えた。そこでBtoCに進出することにした。

――ネットシフトはスムーズに進んだのか?

カタログを主体に事業を展開してきたこともあり、なかなかネットシフトできなかった。ネットはカタログと違い、リアルタイムに価格が変わる。明日届けるといっても「今から何分後までに注文すれば何日の何時に届けます」とより詳しく見せたり、売り場をパーソナライズできたり、カタログのような画一的な静的媒体とは売り場が全く違う。ネットはアイテム数のリミットはないし、レビューもその場で更新されていく。

BtoBもいずれBtoCのECのようになっていくと考えていたが、なかなか変われないことに危機感があった。そんな時にヤフー(現・LINEヤフー)とご縁があった。集客力はあるが商品や物流がないヤフーと、商品や物流はあるがネットの集客や決済のノウハウに欠けていた当社が業務資本提携を結んだ。BtoCでネット流を学び、それをBtoBに生かしていくというシナリオである。

 

品ぞろえ・価格に改善余地


――アスクルもサービスを強化し、商材を広げているが、AmazonやMonotaROなどもBtoBの商材を拡張している。最終的な差別化をどのように実現するのか?

いつの時代も、その時々でお客さまが重要視していることに応えていける企業が支持される。われわれは、特定の業種のお客さまというよりも、あらゆる業種の方が高頻度で使うものを、スピーディーに、高い品質で届けていることが、ご支持いただけているのだと思っている。

「明日届ける」の履行率も高く、商品不良や誤配・誤梱包については極めて少ない。商品仕入れや物流を自分たちですべてデータを持って直接改善し続けているからだ。

――課題はどこにあるのか?

お客さまが人手不足になり、物流も多くは運べなくなり、またCO2排出抑制という社会課題対応の中で、商品をなるべくワンストップで買えるように利便性を上げなければならない。品ぞろえという観点ではまだまだ課題がある。文房具や飲料食品、日用雑貨など普通のオフィスで必要なものはそろう。そこから先のものはまだまだないものもある。

価格もリーズナブルでなければいけないと思う。購入頻度に応じた手ごろ感は大事だ。われわれは広くお客さまにリーチしているので、プライベートブランド(PB=自主企画商品)を作るためのボリュームを出すことができる。

物流を自社でコントロールできていたり、仕入れも自分たちで基準をもってやっていたり、環境対応商品を重視していたりするといったノウハウは、強みになると思う。そういった強みを生かしながら、お客さまの求めるものに応えていけるかを追求しないといけない。

――顧客が求めることが変わる可能性もある。

価値観が変わると一気にゲームチェンジが起こる時代だと考えている。例えば、われわれは「明日届ける」ということを社名でもうたい、こだわっているが、BtoCのお客さまに「2~3日後の受け取りならポイント付きますよ」と伝えると、半分がそちらを選択する時代になっている。お客さまの価値観は変わっていくものだ。大事なことはお客さまに合ったサービスに、われわれ自体が進化することができるかだ。

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