楽天グループ(楽天)は2022年2月、25周年を迎えた。祖業であるECモール「楽天市場」を中心とした国内EC流通総額は、2022年度に5兆6000億円となり、2023年度も2桁増のペースで推移している。「大型セール」「伴走型のサポート」「経済圏」など、楽天が国内EC市場で初めて具現化したサービスは数多い。今ではEC以外にフィンテックやモバイルなどにも積極的に進出し、70超のサービスを展開している。ユーザー数は、グローバルで17億人を抱えるまでに成長した。日本を代表するコマースカンパニーである楽天の常務執行役員 コマース&マーケティングカンパニー シニアヴァイスプレジデント 松村亮氏に、これまでのEC市場の変化や楽天の挑戦、未来展望について聞いた。
4つの大きな環境変化
――日本のEC業界の歴史において、大きな変化を上げるとしたら、何だろうか?
EC業界全体でいうと大きく4つの変化点があったと思う。
最初は「インターネット(ネット)が普及した」という変化が挙げられる。楽天が事業を開始したときは、ネットの普及率はぜんぜんだった。三木谷自身も創業時は「ネットが普及することは間違いない」と信じて、それが1年後か、3年後か、5年後は分からないが、その時に向けてEC事業に取り組んでいたと、よく話している。その見通し通り、ネットは普及し、そして、ECサイトに商品が載っていき、さまざまなものが買えるようになった。
2つ目の大きな変化はモバイルの普及によるデバイスのシフトだと思う。モバイルが出てきたことで、1人1台は端末を持つようになり、誰でもいつでもどこでも商品を買える状態になった。
3つ目の変化点は物流環境の変化だ。宅配クライシスのような配送の課題もあったが、EC市場が爆発的に成長する中で、倉庫などの物流全体をしっかりと整備していかないと、成長を維持できないことが明らかになった。当社だけではないが、物流を強化していくことで、「いつでもどこでも買える」に加えて、「必要な時に商品を届けられる」状態を作ることが重要になった。
4つ目の変化はコロナ禍だ。これまでネットでものを買っていなかった人や、一部のものしか買っていなかった人たちが、ネットで物を買わざるを得ない状況になり、結果としてECの普及率が一段と高まった。ECが社会インフラに昇華していったと思う。
モバイルECをけん引
――2022年には「楽天市場」の流通総額のモバイル比率が80%に達している。「楽天市場」にとってもスマホなどモバイル対応は重要だったのか。
スマホが出始めたことはまだ、アプリはなく、スマホのウェブブラウザ―が主流だった。ただ、デバイスは遅かれ早かれスマホにシフトしていくだろうと考え、ページやコンテンツの作り方をモバイルに合わせた考え方やオペレーションに切り替えていった。モバイル対応が遅れると、モバイルありきで登場したプレイヤーに負けてしまう可能性があるので、当時は「モバイル、モバイル、モバイル」という標語を掲げ、社内でもモバイルファーストを推進していった。
――「楽天市場」がスマホアプリの利用特典などを付けたことで、スマホECの普及率も加速した面もあると思う。
アプリを使っているユーザーは、使っていないユーザーに比べて「楽天市場」の利用回数や頻度が増える。ユーザー体験を高めるためにも、アプリをダウンロードしてもらい、より使ってもらえるように、さまざまな施策を実施してきた。