規制が増えた10年
――先日、発行した会報誌で直近10年間の通販業界について振り返っている。直近10年間の通販業界はどのような歴史だったか?
改めて振り返ると通販業界への規制が強まった10年間だった。機能性表示食品制度など業界の可能性を広げる施策もあったが、通販事業者の活動を制限する規制が非常に増えた。
背景には通販市場が大きく成長し、それに伴うトラブルや相談件数の増加がある。ネットのような便利なツールは、悪質事業者にとっても便利なツールであり、トラブルや被害はなかなか減らない。
少し苦情や相談が増えたからといって、法律で規制しようとしても、法律ができるまでに2~3年かかる。法律が施行されるころには、状況が変わってしまっているケースも多い。
今年の特商法改正では、定期購入を問題視し、確認画面での表示に新たなルールを設けた。ただ、定期購入で悪さを働いていた多くの事業者は、すでにやり方を変えている。規制すべき対象がいなくなり、新たなルールに対応するのは、まっとうな事業者だけという状況だ。
冒頭で特商法の前身の法律で、通販に関する条文は2条のみだったとお伝えしたが、現在は通販だけで十数条ある。さらに条文全体を見ると枝番がたくさんあり、それらを含めると157条くらいある状況だ。
そこまで規制が増えているのであれば、消費者問題は減っていてもよさそうだが、実際は年々増えている。規制ばかり強化するよりも、騙されない消費者を増やす方が効果はあるのではないかと思う。
――騙されない消費者を育成するために、どういった取り組みが必要か?
悪い芽が出たら、消費者が近寄らないように、緊急警告することが大事だと思う。テレビやネットで悪質な手法を警告できれば効果的だ。行政がプラットフォームと連携し、怪しいサービスや事業者を検知し、消費者が近づいたら警告を出せるような仕組みも作れるのではないか。そのような取り組みが増えれば、消費者問題は減るはずだ。必ずしも法律を変えなくてもよい。
消費者教育も強化する必要がある。当協会としても学校教育で通販への理解深める取り組みを行っている。昨年の中学校の教科書では、日本通信販売協会が紹介されている。高校の教科書や副読本の一部にも紹介されている。このような露出はもっと増やしていきたい。
学校の先生や消費者センターの相談員に、通販のことを知ってもらうため、コールセンターや物流センターをオンラインで見学してもらう取り組みも実施している。教育者やリーダーに勉強してもらい、消費者に正しい知識やまっとうな通販事業者の見分け方を伝えてもらいたいと考えている。