2023年、コンタクトセンター業界に大きな動きがあった。業界において売上高3位のりらいあコミュニケーションズと同4位のKDDIエボルバが経営統合し、新会社「アルティウスリンク株式会社」を発足した。アルティウスリンクは2024年9月に、経営統合から1周年を迎えた。1年間の中でさまざまな取り組みを展開してきたが、見逃せないのはデジタルBPOを推進する新サービスブランド「Altius ONE(アルティウスワン)」の提供を開始したことだ。アルティウスリンクの滝原茂執行役員 経営戦略統括本部長に、1年間の振り返りとその中での重要トピックスなどについて聞いた。
――経営統合して1年が経つ。1年を振り返ってほしい。
統合の目的から話をさせていただく。労働人口の減少やDX化の加速など事業環境が変化したことにより、お客さま企業のニーズの複雑化・高度化がさらに進んでいる。コンタクトセンターの”在り方”も変わっていく必要があり、両社とその株主グループのケイパビリティ(企業全体の組織的な能力)を掛け合わせることで、この課題に対処していくのが統合の目的だった。
1年を振り返って、総じて順調に来ていると思っている。業績に関しても、社員の頑張りにより、前年度はおおむね計画通りに推移した。
その中でも、これは経営統合してから明確に分かったことだが、KDDIエボルバと、りらいあコミュニケーションズのお客さま企業はそこまで被っていなかった。そのため、両社の強みを生かしながら、お客さま企業を支援し、業績の拡大につなげている。
――各企業のニーズが「複雑化」「高度化」しているというが、具体的にはどういうことか。
さまざまある。まずはローコストでのオペレーションを希望されていることだ。一方で、従来のコンタクトセンターとは異なり、電話だけの応対ではなく、もっと業績に貢献できる、「LTV」につながるセンターとして機能してほしいという要望もある。いわゆる「プロフィットセンター」としての役割を期待する企業も多い。
――この1年を振り返って、特に注力した点はなにか。
2024年5月、データドリブンで企業のBXに貢献する価値共創型プラットフォームサービス「Altius ONE」の提供を開始した。
「Altius ONE」は、デジタル化によって蓄積されたデータを戦略的に活用し、マーケティングからカスタマーサクセスまで、購買プロセスにおける顧客接点の高度化や、それに伴うバックオフィス業務など包括的な企業活動におけるビジネス課題の解決を目指すサービスだ。
第1弾として、カスタマーサポートに特化した「Altius ONE for Support」の提供を開始した。国内最大規模のコンタクトセンターリソースとなる年間5億件超の応対データを活用する。これらのVOCをはじめとする多様なデータを、オペレーションノウハウとデジタル技術を活用した分析や、インサイトの抽出を通じて、経営の意思決定のスピードを加速させ、新たな顧客体験価値の創出を図る。今後はバックオフィスやセールスサポートなどに特化したサービスのリリースを予定している。
――似たような取り組みは他社も展開していると思う。他社との違いはどこにあるのか。
違いの一つとしては、当社がKDDIと三井物産の共同出資会社であり、株主のビジネスアセットを活用できることだ。KDDIは2024年3月、大規模言語モデルの社会実装を進めるELYZA(イライザ)と資本業務提携を締結し、グループに加えた。
また、KDDIは2023年3月、プライバシー保護とデータ活用を両立するプラットフォーム「Conata (コナタ)」を運営するフライウィールとも資本業務提携を締結した。
データ活用やDXに精通した企業と、同じグループとして協働し、知見を活用できることで、より優れたサービスを開発できるようになっている。
――現在の課題は。
BPO業界としては、コロナ関連需要は収束し、新たなステージに入っている。新規・既存問わず企業のDXマインドや顧客接点の進化に応えうる、より広範なサービスを提供し、企業のビジネスへの貢献が命題となっている。さらに、業界を見ても人に過度に依存した労働集約型のビジネスモデルからの変革が必要だと感じている。
だからといって、人を軽視しているわけではない。単純な作業は「生成AI」などのテクノロジーが行い、より高度な業務やエンドユーザーへの”おもてなし”は人が行う必要がある。今まで以上に人の価値は高まるだろう。テクノロジーは、こうした人ならではの応対をサポートする役割も果たしていく。これまでもCXの向上に注力してきたが、今後はさらに付加価値を高めていく必要がある。
――今後の展望についても伺いたい。
まずはプラットフォーム「Altius ONE」をスケールアップさせていきたい。そのためにも、継続的な機能拡張を行ったり、企画提案力やコンサルティング力も高めていく。
2024年4月には、パーパス・バリューズを策定した。パーバスは「そのつながりを、もっとつよく。うつくしく。おもしろく。」、バリューズはパーパスを実現するに当たって重要になる11の価値観を示しており、新たな企業文化の醸成に向け、全社で浸透・実践を進めている。
これからも人の持つ普遍的な価値を大切にしながら、最新のテクノロジーを活用し、お客さま企業への提供価値を高めていきたい。