一般社団法人日本コールセンター協会(CCAJ、事務局東京都、呉岳彦会長)は10月1日、協会名を変更した。新たな協会の名称は「一般社団法人日本コンタクトセンター協会」だ。事務局の移転や会長の変更などはない。協会名の変更について、呉会長は「時代の流れは急速に進んでおり、企業や消費者にとって、もう接点は電話だけではない。あらゆるチャネルでの接点が求められている。協会としてもそれに対応しなければならない」と説明する。呉会長に協会名変更の経緯や、今後の協会の指針について聞いた。
迅速に協会名変更
──協会名を変更した経緯について伺いたい。
急速な時代の進化もあり、コンタクトセンター企業、消費者にとって、接点はマルチチャネル化している。一昔前は顧客対応の方法は電話のみだったが、現在はメール、SMS、チャットなど幅広い。今後もますます顧客との接点方法は拡大すると思っており、電話を意味する「コールセンター」から「コンタクトセンター」に協会名を変更する必要性があると思った。
──いつから協会名の変更を考えていたのか。ここ数年の課題だったのか。
具体的には、私が会長に就任してからだ。私は2023年6月に会長へ就任した。その後、すぐ同年11月の理事会で「協会名を変更したいと思うがいかがですか」と確認を取り、理事会の承認を経て、2024年10月、協会名を変更することにいたった。
──変更点は。
まずは名称だ。名称変更に伴って、会報誌と名刺のデザインは変更した。一方、協会名の英語の略称である「CCAJ」という表記や、協会の役員について変更はない。
守りと攻めを意識
──日本コンタクトセンター協会になってから協会として力を入れていくことは。
主に”守り”と”攻め”を意識していく。”守り”はまずは情報保護だ。昨年、コンタクトセンター企業の個人情報漏えい問題が続いてしまった。協会としてもガイドラインを作っており、これを多くの企業に普及させていきたい。
近年では、カスタマーハラスメント(カスハラ)の問題も目を背けることはできない。カスハラは顧客からの暴行、脅迫、暴言、不当な要求という理不尽で著しい迷惑行為のことを指す。コンタクトセンター企業は電話を受けるため、どうしてもカスハラを受けてしまうことがある。協会としてカスハラに関するガイドラインを作成して、企業に伝えていきたい。
──カスハラのガイドラインは協会に所属している企業から熱望されているのか。
必要としてくれていると思う。「参考にしたいからガイドラインを作ってほしい」という企業や、「そもそも知見がないのでガイドラインを見ながら顧客対応を考えていきたい」という企業など、声はさまざまだが、必要としてくれている実感はある。今年度(2025年3月)中には、カスハラに関するガイドラインを作成し、協会として発表していきたい。
──”攻め”の分野も伺いたい。
時代に適応して、”変わっていく””変えていく”必要がある。チャネルが多様化し、デジタル化することで、人に求められるものも変わってくる。協会として、そのようなエッセンスを入れながら、時代に適応していきたい。
──コンタクトセンター業界は採用や人材の定着が課題だと思う。協会としてどう対応していくのか。
もちろん多くの人にコンタクトセンターの存在、仕事内容を知ってもらい、応募につながることを期待している。近年はIT企業も協会に参加しており、IT企業からの発信も重要になってくると思っている。
電話だけでない、最先端のテクノロジーを活用している事例などを発信することも必要で、そうすることで、「新しいことに取り組んでいる」と注目してもらえる。とにかく「新しいことに挑戦している協会なんだよ」という発信には力を入れていきたい。
協会が捉えるトレンド
──コロナも収束した。協会として現在のトレンドはどう捉えているか。
やはり自動化や効率化は加速している印象を受ける。以前は人が対応していた業務を機械が行い、オペレーターやスーパーバイザーをサポートしてくれる。この動きが目立ってきたと感じている。
あとはウェブ上で解決できることが増えた。いちいちコンタクトセンターに電話しなくても、チャットボットやFAQなどで自己解決できるようになった。この2点の変化が大きいと捉えている。
──昨今は生成AIの話題もよく聞かれる。協会としてセミナーなどは開催していくのか。
今後、生成AIを活用した事例などを紹介する勉強会などを開催し、どのように企業は生成AIを活用していくべきかを考える機会の場を提供する。
──生成AIやテクノロジーが発展すると、顧客対応のレベルが平準化されていく。そうなると最終的な購入の後押しは”人”が鍵を握ると思う。今後、”人”の教育方法の精度の高さが重要になると思うが、協会としてはどう認識しているか。
結論から言うと、人の教育方法はより重要になってくると思っている。どのような教育を実施していくべきなのか、人がやるべきポイントとテクノロジーに任せるポイントはどこなのかを、これから見極めていかなければいけない。個人として一応の仮定はあるが、まだそこに行き着いた企業はいないと思う。
セールスマーケティングをもっと分析し、消費者行動を見て、その人が1番気持ちよく買い物できるようにデータやAIを活用すべきだと思っている。その事例が出てくる過程において、では、そこで「人は何をしなければいけないんだ」という部分が定義されていくような気がしている。