化粧品や健康食品のコンサルティング事業を展開するクリームチームマーケティング(本社東京都)の山口尚大代表は、今後の健康食品通販業界において、「企業がどのようなポジションを取るのかが、ますます重要になってくる」との見解を示す。通販市場の現状や展望、企業が生き残るための具体的な方法について山口代表に聞いた。
──現在の健康食品通販業界は、やや厳しい市況感もあるが、どのように捉えているか。
私も厳しい状況にあると感じている。背景には、健康食品業界の中でも、さまざまなカテゴリーの商品が混在しており、消費者にとって違いが分かりにくくなっていることが挙げられる。カテゴリーは大きく分けると、①機能性表示食品 ②サプリメントや青汁などの健康食品 ③発酵食品やスープなどの一般食品─の三つがあると思っている。
企業が「どのカテゴリーで勝負するのか」、そして「その中でどのようなポジションを取るのか」が、今後ますます重要になってくると考えている。
──具体的にポジショニングが有効に働く事例は?
例えば、一般食品や飲料においても、「ただのおむすび」「ただのお茶」として販売するのではなく、そこに機能性の要素を付加した”ポジショニング”を与えることで、新しい商品ジャンルとして打ち出すことができる。
それは特に「おむすび型のサプリ」「お茶型のサプリ」というような概念のことだ。コンビニエンスストアで販売している昆布や梅のおむすびと競合すると価格競争になるが、「これは栄養補助食品の一種として、サプリメント的な機能を持ったおむすびです」と定義すれば、価格設定や販売チャネルを含めて別のステージで勝負ができる。
──消費者の支持は得られそうか。
海外では、「グミ型サプリ」「お菓子サプリ」など、摂取しやすく続けやすい健康食品の形態が増えている。日本でもその流れは確実に来ると思っている。
実際に、サプリメントを継続できない理由の多くは、「面倒」「飲みづらい」「味が苦手」など、”形状や体験”にあると考えている。それならば日常的に楽しめる食品の形態にすることで、”継続”という業界最大の課題に対する一つの解決策になると考えている。
──栄養素を多く入れると販売価格も上がるのではないか。
販売価格が上がるというよりも、「適正な価値を伝えることで、販売価格を上げることができる」と考えている。通常のおむすびは1個100円程度だが、商品によるがサプリメントは月額4000~5000円の価格帯が一般的だ。
このことを踏まえると、「栄養を補えるおむすび型のサプリ」を1個300円で販売しても、”高い”という印象を持たれる可能性は低いはずだ。企業にとっては、安売りによる疲弊から脱却し、価値に見合った価格設定を行うための手法の一つにもなる。
──中小企業やスタートアップにとっても有効な方法か。
非常に有効だと思う。中小企業の多くは、大手企業と違って独自の新成分を開発するリソースが限られている。大手企業は新しい成分を軸にブランディングを行えるが、その成分を”知ってもらう”ところからスタートする必要があるため、多額のマーケティングコストが発生する。
一方、すでにある程度認知されている成分(ビタミンC、鉄分、乳酸菌など)をうまく活用することで、消費者の理解促進のスピードは早くなる。マーケティングコストを抑えつつ、成果につながりやすくなるだろう。
”深度”で訴求
──その他、企業が今後生き残る上で大切な視点は?
やはり、「正しいポジション」と「悩みの深度に応じた訴求」が重要だ。
「悩み」と言っても、その深さには段階がある。”膝の悩み”でも、「走ると痛い人」「歩くと痛い人」「朝からずっと痛くて動けない人」では、必要なアプローチも求める商品も異なる。
悩みが浅い人には、生活の中で自然に取り入れられる食品的なアプローチが適しており、深い悩みを持つ人には、より機能性の高いサプリメントや機能性表示食品の方が受け皿として適している。
”誰に届けたいのか””その人の悩みはどのレベルか”を見極めて、最適な商品設計・ポジションを取ることが、これからの健康通販業界ではより求められると考えている。