雪印メグミルクは2025年5月に創業100周年を迎えた。次の100年に向けたマイルストーンとして、2050年の理想の社会である「未来ビジョン2050」と新経営計画「Next Design 2030」を発表した。社会的価値と経済的価値の同期を目指す中で、同社が「成長の果実」として期待を寄せるのが、「MBP」を素材とした、通販主軸の機能性食品事業だ。森隆志常務執行役員に、通販事業の現状と、変化する顧客へのアプローチについて聞いた。
「骨密度を高める」唯一のトクホ
──中期経営計画における機能性食品事業の位置づけについて聞きたい。
当社は2030年に向けて、全社の営業利益を現在の約190億円から350億円へと引き上げる計画を掲げている。目標達成には、高付加価値な事業の成長が不可欠だ。その中核となるのが機能性食品事業。機能性食品事業の大部分を占めるのが、グループ会社であるベルネージュダイレクトと一緒に取り組んでいる、「MBP」を中心としたトクホや機能性表示食品の通販事業だ。
最大の柱の商品は「毎日骨ケア MBP」だ。「MBP」は「Milk Basic Protein(ミルクベーシックプロテイン)」の略で、日本語では「乳塩基性たんぱく質」。牛乳にわずか0.005%しか含まれない希少なたんぱく質だ。骨を作る細胞と、壊す細胞のバランスを整える働きがある。骨密度を高める働きを持つ特定保健用食品としては、国内唯一の商品だ。高い定着率を誇っており、定期コースの継続率は95%以上となっている。
この商品を入り口として、N-アセチルグルコサミンを配合した「毎日一粒関節ケア」や牛乳由来のカルシウムを配合した「ミルクの雫」や、内臓脂肪を減らす「ガセリ菌SPカプセル」、話題のNMNを配合したサプリなどへのクロスセルにつなげている。そうすることで、LTV(顧客生涯価値)を高める構造を作っている。
「顔のたるみ」と「骨」の関係
──どのような世代にニーズがあるのか。
骨粗しょう症などの骨の健康課題にリーチする商品となっている。ただ、骨密度低下や骨粗しょう症は、メタボなどに比べて優先順位が低くなりがちだ。医療機関の骨密度検診の受診率も、現在は6%程度にとどまっている。そこで私たちは、単に「将来の骨折予防」を訴えるだけでなく、全く異なる切り口でのアプローチを強化している。その一つが「美容」だ。
実は顔の骨密度が低下して骨が痩せると、その上の皮膚が余り、シワやたるみの原因になる。女性の多くは美容液などで肌表面のケアには熱心だ。その「土台」である骨のケアも重要だと伝えると、非常に強い関心を持ってくれる。結果として全身の骨のケアにつながり、将来の寝たきりリスクも減らせる。入り口を変えることで行動変容を促している。
アスリートへの訴求も進めている。例えば、女子駅伝の強豪である名城大学などと連携し、激しい練習による疲労骨折のケアとして「MBP」の配合された商品を活用いただいている。
デジタル時代のシニア戦略
──新規顧客の獲得チャネルに変化はあるか。環境に変化は?
劇的に変化している。かつての「シニア=新聞・テレビ」という図式は崩れつつある。現在の65歳以上の人はデジタルリテラシーが高い。現在、主力製品のオンラインの獲得比率は、50%近くになっている。
モール経由の売り上げも無視できない規模になっている。ポイント利用や利便性を優先するお客さまも多く、重要なチャネルの一つだ。一方で、自社の顧客データに取り込めないというジレンマはある。
獲得効率の悪化や広告費の高騰は業界全体の課題。今後はAIを活用したデータ分析を深め、より精度の高いマーケティングへと移行していく必要があるため、ベルネージュダイレクトを含めてグループ全体で取り組んでいきたい。
世界へ広がる「機能性素材」
――新経営計画では海外展開についても挙げているが。海外事業の利益も現在の1億円から70億円へと大幅に伸ばす計画だ。計画達成に向けて機能性素材のBtoB販売への期待は大きい。現地のメーカーにMBPやガセリ菌などの素材を提供し、商品化してもらう形であれば、スピーディーな展開が可能だと考えている。日本の技術が生んだ機能性素材を、世界中の人々の健康課題解決に役立てていきたい。
