林純薬工業の和田社長は、試薬業界でも挑戦的な取り組みであるオンライン試薬購入サイト「試薬ダイレクト」の立ち上げの経緯から、事業拡大で苦労した点などを紹介した。
「多くのユーザーに販売できる販売代理店は主要メーカーとの取引が強く、当社の取り扱いは思うように伸びなかった。ECによる接近戦で直接、ユーザーに販売できる仕組みを考え、『試薬ダイレクト』を立ち上げた」(和田社長)と話す。
和田社長がカートシステムを契約し、自作でサイトを立ち上げてから、知見のあるスタッフの採用や、システム移行に伴うリニューアルを手掛け、サービスを拡大してきた。
「リニューアルの際にはユーザー視点を取り入れ、ユーザーの体験を重視するサ―ビスに刷新した。社内の業務を考ええると、どうしてもユーザー視点から離れてしまうことがある。それを何度も立ち返ることで、ユーザー視点を重視する文化が育まれている」(同)と話す。
BtoB-ECにおいてもユーザー視点が重要であると強調した。
被災をばねに飛躍
ふくべ鍛冶の千場代表は、包丁研ぎ宅配サービス「ポチスパ」誕生の経緯を紹介した。
「ポチスパ」は専用ボックスに包丁を入れて、送るだけで、包丁を研いで返送するサ―ビスだ。業界初のサービスとして、料金をシンプルにオールインワンで設定したことで、徐々に利用者を拡大してきた。
「能登半島地震で大きな被害を受けたが、クラウドファンディングを実施したり、多くのメディアに取り上げられたことで大いに助けられた。資金の借り入れや雇用の維持など、経営判断に迫られながらもさまざまな助けを受け、大きくサービスを伸ばすことができた」(千場代表)と話す。
千場代表が家業である、ふくべ鍛冶に入社した際は、年商600万円ほどだったというが、「ポチスパ」の普及や、包丁の新製品の販売拡大により、10年程で売り上げは10倍超に拡大している。
両社とも専門性の高い事業でありながら、ECを活用し、顧客や販路を広げることで、業績を拡大している。業界で先駆けた取り組みを行うことで、以前は競合でもあった同業者と協業するケースも生まれている。業界でも先駆的な取り組みに挑み、成果を上げていることが、今回の受賞にもつながったと言えるだろう。
JADMAは「次世代コマース大賞を通して、消費者のニーズに対応した先進的な施策を展開している事業者を毎年、表彰している。今回は第7回の表彰だったが、今後も同賞を継続していく考えだ。
