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2026.04.08

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【AI見据えたデジタルへの対応とサプリの信頼回復へ】 消費者庁 堀井奈津子長官 インタビュー

堀井奈津子氏


消費者庁の堀井奈津子長官は本紙の取材に応じ、現在進めている特定商取引法の検討会と、サプリメントの定義に関する審議会の狙いについて語った。デジタル技術の悪用による消費者被害が深刻化する中、健全な市場形成に向けて、AIが当たり前になるデジタル市場も見据えて、対応していくという。機能性表示食品を始めとしたサプリの信頼回復にも努めると話している。





デジタル空間の「歪み」正す


──特商法の検討が進んでいる。改めて改正に向けた議論の背景を聞きたい。

 
最大の要因は、消費を巡る環境の劇的な変化だ。情報通信技術の進展により、消費者は時間や場所を問わず取引ができる利便性を手にした。
 
その一方で、デジタル技術の裏をかく悪質な勧誘行為や消費者の意思形成をゆがめるユーザーインターフェース(UI)、いわゆる「ダークパターン」が拡大している。
 
現在、PIO-NETに寄せられる相談件数は年間約90万件に上るが、その3~4割が「通信販売」に関するものだ。さらに、そのうち75%以上が「インターネット通販」という現状がある。
 
こうした状況も踏まえ、デジタル取引の課題にどう向き合うかが、今回の検討会の核心である。
 
──規制強化に対しては、真っ当な事業者の経済活動を阻害するとの懸念もある。
 
確かに、一部の事業者には事務的・コスト的な負担が生じる可能性はあるが、悪質な事業者が排除されることによる「市場の健全化」のメリットの方が圧倒的に大きいはずだ。
 
商品力で勝負している良質な事業者にとっては、むしろ歓迎すべき環境整備になると期待している。

──将来的には、AIが商品を推奨・代理購入する「エージェンティックコマース」の普及も予見される。
 
今回の改正議論は、そうした次世代の取引形態も見据えた検討の第一歩と言える。
 
ただ、AIを活用した取引については、将来的に、法的な責任の所在など、より高度な議論も必要になるだろう。


サプリの信頼再構築


──紅麹問題を受け、サプリメントの定義やGMP(製造管理基準)の義務化が議論の焦点となっている。

 
紅麹問題で改めて突きつけられたのは、食品に対する「信頼」の重みだ。
 
機能性表示食品制度は消費者の健康志向に応える形で大きく成長してきたが、一度健康被害が発生すれば、一社に留まらず、業界全体、あるいは食品全体への信頼が根底から揺らいでしまう。
 
──審議会では、サプリメントの範囲をどう定義し、安全性を担保しようとしているのか。
 
サプリメントの定義については、委員から「形状(錠剤・カプセルなど)のみに頼らず、含有量や成分、安全性、有効性を総合的に検討すべき」との意見が出ている。グミや飲料など、食品との境界が曖昧なものも含め、どうルールを適用するかが課題だ。
 
重要なのは、二度と健康被害を繰り返さないための実効性だ。

厚生労働省とも連携し、健康被害情報の提供義務化や、信頼性を高めるためのGMPの要件化などの検討を進めている。
 
──GMP導入には多額の設備投資が必要となり、中小メーカーからは「廃業せざるを得ない」との悲鳴も聞こえる。
 
現場の厳しい事業環境は十分に認識している。しかし、被害が起きた際のダメージの大きさを考えれば、健全な市場の参加者として一定の基準を満たすことは、長期的なビジネスの持続可能性(サステナビリティー)に直結する。消費者庁も知恵を出していきたい。


AI時代の「デジタルリテラシー」


──行政や事業者だけでなく、消費者側のリテラシー向上も重要ではないか。

 
2026年度の消費者月間のテーマを「見える情報 見えない仕組み―AI時代の消費者力を高めるために―」としたのも、まさにその問題意識からだ。
 
現代のマーケティングはパーソナライズ化が進み、自分に合った情報が手に入る利便性がある。
 一方で、その情報がどう選別され、提供されているのかという「見えない仕組み」を知らなければ、無意識に判断を誘導されてしまう。この仕組みやリスクを理解するなど、デジタル社会に必要なリテラシーを養うことが、AI時代の「知識の武装」になる。
 
行政、事業者、そして消費者がそれぞれの立場で「健全な市場」とは何かを考え、行動を変えていく。今、私たちはその大きな転換点に立っている。

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