約4万円の高圧洗浄機を、放送開始から1時間で完売させた。短時間で収納棚を7800万円売り上げた。そんな実績を持つのは、実演販売士のジャンプ中澤氏だ。テレビ通販から量販店、展示会での実演販売を手掛けている。大手企業向けに、販売に関するセミナーの講師も務めているという。ジャンプ中澤氏は対面販売のこだわりについて、ユーザー目線で”ストーリー”を作り、”言葉”で引き付けることを意識していると話す。
ユーザーの課題解決を優先
──1時間で完売した高圧洗浄機はどんな製品でしたか。
バケツ型で折り畳める高圧洗浄機でした。
商品を説明するときに気を付けるのは、商品のスペックや技術的な凄さを、いきなりアピールしないことです。メーカーの開発者は「1ミリ薄くした」「最新の技術を使った」など、性能面にこだわりがちですが、ユーザー目線だと、その情報は最初に商品を目にした時に必要ありません。
ユーザーが興味を持つのは、「自分の生活の何を解決してくれるのか」という一点に尽きます。
高圧洗浄機で考えると、都心の狭小住宅では高圧洗浄機なんて必要ないと考える人が大半です。ただ実は、ベランダや窓、網戸、自転車、アウトドア用品などを手軽にきれいにできるメリットがあります。
小さく折りたためるタイプなので、収納にも困りません。
「もしかしたらこれ欲しかったかも」と、お客さまの隠れたニーズを引き出すことができ、完売しました。
満足させては売れない
──現場で顧客を惹きつける際、どのような点にこだわっていますか?
私の武器は前職の演劇や声優の経験を生かした「声色変化」と「見やすい演出」です。17年からは、ぬいぐるみを相棒として使うようになりました。
お客さまの声を代弁し、掛け合いにすることで、分かりやすくしています。子どもの食いつきが良く、親が興味を持つきっかけにもなります
実演販売の用語で人だかりを作ることを「卓(たく)を打つ」と言いますが、人垣ができたからといって売れる訳ではありません。売り上げの最大化を目指すなら、集客の先にある「引き算の技術」を知らねばなりません。
──引き算の技術とはどういうことですか?
多くの人を集めて単なる面白いエンターテインメントとして満足させて終わってしまえば、物は売れません。
特に高額な商品やBtoBのシステムなどを売る場合、私はあえて途中で専門用語を交えたり、「ここからは長くなります」とアナウンスしたりして、冷やかしの客をふるい落とします。
本当に導入を検討している”熱い顧客”だけを残し、確度の高い状態でメーカーの担当者へつなぐのです。イベントのゴールに合わせて現場の空気をコントロールすることこそがプロの立ち回りです。
生で五感に訴える
──ジャンプさんは企業の販売員向けに、営業セミナーの講師としても活躍されています。今の時代、営業マンに求められるスキルとは何でしょうか?
生身の人間だからこそ感じられる、触覚、嗅覚など五感に訴えかけるような表現、記憶に残るデモンストレーションや体験を盛り込むことが重要だと考えています。
情報は埋もれて忘れてしまうけれど、体験感情はしっかり残ります。ネットにはなく、現場にこそある、自身が聞いてきたお客さまの声を生かすことを意識しています。
──ジャンプさん自身がインフルエンサーのようにファンを作ることはありますか?
私の仕事は実演販売士なので主役は商品だと考えています。
自分自身が商品より前に出ないように心掛けています。私よりも商品やメーカーのファン、メーカーの営業担当者のファンになってもらうことが一番だと思っています。
自分は商品と人をつなぐ架け橋だと思っています。
「生のコミュニケーション」に価値
──AIの進化などにより、対面営業の価値が問われています。
私はむしろ、今の時代だからこそ対面営業の価値が上がっていると確信しています。ネットを開けばあらゆる情報が手に入り、AIが機械的に寄り添ってくれる時代だからこそ、人は心の交流を求めているのではないでしょうか。
現場で顧客の生の声に耳を傾け、泥臭く対話を重ねてきた経験は、どこにも負けない強みになります。物があふれる現代において、顧客は最後に「信頼できる人から買いたい」という感情で動きます。この泥臭いコミュニケーションの価値を信じ、磨き続けることこそが、いつの時代も変わらないと思います。
