さらに市場の課題は、送り手側のコストだけに留まらない。現代の消費者の間には環境資源の保護やサステナブル(持続可能)な価値観が深く浸透しており、ポストを埋め尽くす「大量の一斉送付DM」に対する抵抗感や心理的ハードルは年々高まっている。企業側には、コスト削減だけでなく、環境への配慮という社会的責任の観点からもDMのあり方を見直すことが迫られている。
こうした外部環境の激変と消費者マインドの変化を逆手に取り、独自のデジタル印刷技術で通販会社のCRMに大きなコストメリットをもたらしているのが、老舗印刷企業の福島印刷だ。
同社が展開するコアサービス「パックサービス」は、不要な印刷を徹底的に排除することで、通販会社のDM運用に関わる人員を「5分の1」にまで削減できるという、圧倒的なコスト効率化を実現して注目を集めている。
オフセットからデジタルへ
従来のDM印刷は、大型の機械で大量に回す「オフセット印刷」が主流であった。これは大ロットであれば1通あたりの単価を抑えられる反面、小ロットや複数のデザイン出し分けには弱い。宛名印字を別工程で行う必要があり、リードタイムや在庫管理の面でも非効率さを抱えていた。何より、ターゲットを絞り込めない一斉送付は、消費者から「資源の無駄遣い」と捉えられかねないリスクも孕んでいた。
福島印刷の「パックサービス」は、「オフセット」の印刷工程とは異なる工程となっている。
A社、B社、C社という複数顧客の異なるデザインやセグメント別のデータを、共通の仕様(規格・形状)のもとで1つにまとめて同時に出力する。

▲「パックサービス」では、別々の企業のDMを同じジョブとして印刷し、スピード感のある印刷が可能だ
毎日運行する乗合バスに、さまざまな顧客のデータを載せていくイメージだ。これにより、デジタル印刷の弱点であったコスト面を克服し、小ロットであっても大ロット並みの低コスト化を実現した。定期購入の購入回数や、年齢、購入経路などに応じてセグメントした顧客に対して、パーソナルなクリエーティブのDMを、スピーディーに印刷することが可能となっている。
さらに、デザインの印刷と個人情報の印字を同時に「1工程」で完了させるため、宛名間違いなどのセキュリティーリスクを極限まで低減。同社が得意とする、開封時にきれいに剥がせる高精度な「圧着ハガキ」の加工ラインへとシームレスに直結している。
このシステムが最も真価を発揮するのが、通販会社が顧客の購買フェーズに合わせて送る「フォローDM」や「リテンション(既存顧客維持)施策」の現場である。
従来のオフセット印刷では、いつ必要になるか分からないDMをあらかじめ大量に印刷し、倉庫に保管しておく必要があった。ある大手通販会社では、そのバリエーションが400種類にも及び、現場は膨大なブラックボックスを抱えていたという。
パックサービスを導入することで、在庫レスを実現できるようになった。通販会社は制作データをデジタルで福島印刷に預けるだけでよく、毎日、必要なセグメントの必要な通数だけがオンデマンドで自動生産され、そのまま投函される。
無駄な紙を刷らず、無駄な在庫を持たず、無駄な人手をかけない。製品の原材料や容器、紙、インクなど、さまざまな資材の価格が値上がりする中で、効果的なマーケティングを低コストで実施するのは、今後の通販において常識となっていく。それに一役買いそうだ。
