エシカルECの代名詞に
――今後の通販・EC市場はどのような変化が起きると思うか?
まだまだ全体感でいうとEC化率は高くない。日本は店舗密度が高いから、そこまでEC化率が高まらないという見方もある。
ただ、ネット通販ならではの価値は、時間と場所を選ばないところだ。今後、ネットを使える人が高齢化していくと、ますますこの価値が高まると考えている。地方は過疎化が進むと実店舗が運営できなくため、なおさらネット通販が重要になる。実店舗にできなくて、ネット通販ならできることも増えている。パーソナライズはその典型だ。実店舗かネット通販かではなく、お客さまの使い分けがより進むだろう。
確実にいえることは、物流コストが今後、不可逆的に上がるということだ。ラストワンマイルの人手不足や倉庫の人件費高騰も進むと思うが、われわれのような流通業のもとに商品が届くまでの長距離輸送も深刻だ。
今後の物流対策には、協業とテクノロジー活用が必須である。当社もメーカーと共同配送を進めており、倉庫や配送におけるテクノロジー活用も積極的に行っている。
気候変動などの環境変化や、SDGs対応は、もはや前提となってくる。当社ではPB商品に環境スコアを付ける取り組みを始めており、お客さまからの評判が良い。世界的なトップメーカーから、自社製品にも「環境スコアを付けてほしい」という要請をいただいている。
「高齢化社会・人手不足」「テクノロジー」「気候変動」の3点を特に注目し、われわれがどうあるべきかを常日頃から考えている。
――環境貢献やSDGsの取り組みで、顧客や取引先から支持を得るのは難しくないか?
お客さまや社会にとっていいことをメーカーに働きかけること、お客さまにきちんと伝えていくことも、私たちの価値だと思っている。小売りとして情報を自分たちだけで抱えるのではなく、その情報をメーカーにフィードバックすることが喜ばれている。「共創」や「データの民主化」には積極的に取り組んでおり、本当の意味での「三方よし」を作りたい。
お客さまが求める価値に応えつつ、私たちから半歩先の提案をしていくことも重要だと考えている。数あるECの中でもアスクルを使うことが「一番、エシカルだよね」と言ってもらえるようになるのが、われわれの向かうべきサービスの姿だ。
――AIなどテクノロジー活用が進むことで、未来の通販・ECの姿はどのように変わると思うか?
未来を想像することは難しいが、30年前を考えると過去から現在への変化を見ることができる。振り返ると、それまで人間がやっていた業務はソフトウェアツールやロボットにどんどん置き換わり、生産性は劇的に向上し、また物理的なモノやことがネット空間に移行してきていることが分かる。今後もいろいろなものが、加速度的にAIやロボットに代替されてゆくのではないかと社内で話している。
中間で価値を出していたものが、どんどん取って代わられている。ひょっとしたら、われわれの仕事もAIに取って代わられてしまうのかもしれない。現在のような流通業自体がなくなるのかもしれない。発注はすべて自分専用のAIが管理して、必要になったら自動的にすぐ届く世界が訪れるのかもしれない。
われわれがそんな未来に生き残るためには、「エシカルeコマース」のハブとして、メーカーやステークホルダー、そしてお客さまを有機的にネットワーキングして価値を生み出す存在にならないといけないと考えている。