楽天も独自のAI開発で成果
楽天はOpenAIなどAI開発企業と戦略的な提携を結びながら、独自の生成AI「Rakuten AI」を開発している。
「楽天は世界的に見ても特殊な会社。世界に展開しており、持っているデータが半端ない。類まれなるデータをベースに、世界から集めた有能なエンジニアがさまざまなAIを開発している。楽天の生成AIはOpenAIの『ChatGPT』などと比べると、専門的にフォーカスした『小さなAI』だが、世界的にもトップクラスの水準にある」(同)と語る。
楽天が独自の生成AIを開発する理由は、「効率性の高さ」にあるという。「大きなAI」は多くの情報を収集・活用するため、計算料金が高くなり、正確性も不安定になる。楽天はショッピングなど限られた機能にフォーカスしたAIを開発することで、正確性、機能性が高いAIを最適なコストで開発できる。
新たな日本語の生成AI「Rakuten AI 2.0」や、モバイルにも搭載できる小規模言語モデルの「Rakuten AI 2.0 MINI」を近日公開する予定もある。
楽天のAI活用ノウハウを詰め込んだ新サービス
楽天は提携企業の生成AIや、独自のAIを活用し、マーケティング効率、オペレーション効率、クライアント効率を20%向上する「トリプル20」を目標に掲げている。
「楽天のAIを全店舗さんに広げていきたいと思っている。そのためにも、まずは楽天の全社員がAIを使いこなせるようにしたいと思っている。すでに『Rakuten AI』を使っている社員数が3万人超おり、毎日使っている社員が8000人超いる」(同)と言う。
「楽天市場」の店舗など多くの事業者にAI導入を進めるため、1月29日に企業向け生成AIサービス「Rakuten AI for Business」の提供も開始した。
「『ChatGPT』などだと個人情報や企業秘密を外部に出してしまう恐れがある。『Rakuten AI for Business』は導入企業の情報のみを扱うため、その心配がない。さらにビジネスに特化したものになっており、営業活動、事務作業、マーケティングの効率化に使いやすい」(同)と話す。
検索、レコメンド、広告などでAI活用が進行
楽天自信のAI活用事例も紹介した。まず楽天グループの「楽天24」「楽天ブックス」など11サービスにおいてAIを用いた「セマンティック検索(意味検索)」が稼働しているという。
「『おいしいお酒が欲しい』『北海道に行った時に着るダウンジャケットが欲しい』という文章で検索しても商品が出てくる。これまではワードでしか検索できなかった。今では『セマンティック検索』により、検索結果ゼロが98.5%なくなり、流通総額は5.3%上がっている」(同)と話す。
AIを活用し、「楽天市場」のユーザー検索体験のさらなる向上も目指す。ユーザーの嗜好や時間、季節、地域など個人ごとのニーズに合った検索結果の表示を目指している。
「例えば『ブラシ』と検索した際に、男性には靴用のブラシを表示し、美容意識の高い女性には美容用のブラシを表示する。ファッションに関しては『ワンピース』というワードでも、冬に検索するか、夏に検索するかで結果を変える。将来的には北海道で検索した場合と沖縄で検索した場合の結果も変えていく」(同)と話す。
検索以外にも「セマンティックレコメンデーション」を7サービスに導入し、「楽天市場」アプリにおいて、パーソナライズ化されたおすすめウィジェットでの購入が59%向上したという。
ダイナミックな広告表示にもAIを活用している。購入数やコンバージョン率、顧客満足度を向上させるため、より関連性の高い広告を表示できるようにしている。「楽天市場」のトップページ広告からの広告売上の引き上げにおいて、4%増という結果が出ているという。