「クリクラ」ブランドで水宅配事業を手掛けるナックでは2022年以降、コロナの影響が弱まるに連れて、営業に適した環境が整ってきつつあるという。2023年は、新規顧客の獲得営業の活性化に期待しているといい、各加盟店の販促活動を後押ししていく考えだとしている。ナック・クリクラビジネスカンパニーでカンパニー代表を務める、小磯雄一郎取締役専務執行役員に、アフターコロナに向けた期待感について聞いた。
2022年は新規営業に慎重
─2023年3月期の業績はどうだったか?
クリクラでは2023年3月期において、加盟店部門と直営店部門の両方で、顧客数が微減となっていた。
2023年3月期は、コロナの終息に向けた機運がようやく高まってきたこともあり、当社から加盟店に対して、新規獲得の営業のアクセルを掛けるよう後押しした。ただ、積極的に動く加盟店は多くなかった。
2022年3月期以降は、首都圏や関西圏で人流が増加するなど、営業環境が整ってきたと思っている。ただ、地方都市においては、まだまだ自粛する雰囲気が漂っているところも少なくなかった。加盟店としては、「営業がきっかけでコロナ感染者を出したらどうしよう」という考えが引き続き先行していたようだ。
2022年10月には、資材価格や人件費、物流費などの高騰を受け、クリクラボトル(ウォーターボトル)の価格を改定した。12リットルで130円、5.8リットルで70円、それぞれ値上げした。
当面の間は、価格を改定せずに運営を行っていく予定だ。ただ、資材価格の値上がり幅が、クリクラボトルの価格の上げ幅に届くのも、そう遠くなさそうな勢いだ。効率的な販促活動を行うことを引き続き検討していくが、先行きは不透明な状況だ。
─アフターコロナの機運が高まっているが、対面の営業は活性化しそうか?
マスクが個人の自由となり、新型コロナの扱いが5類となったことで、市場全体の動きが活性化している。久しぶりに催事販売を実施できると喜んでいる加盟店もいる。今後は、地域に根差したローカルストアマーケティングを実施・指導していく。
2024年3月期には、ウェブやリアルの販促費を、より適切に活用できると考えている。新規顧客の獲得は、コロナ禍に比べて、より効率的に実施できるだろう。
一方で、消費者のニーズは変わりつつある。生活に必要なものの物価が全体的に上がっているため、生活の中で宅配水のサービスに対する優先順位が下がるというお客さまも一定数出てくるだろう。
そうした背景もあり、自宅で水道水をお客さま自身がタンクに補充する、浄水型サーバーのニーズが拡大している。宅配水より比較的安価に利用できる。
一方で、私としては、浄水型サーバーの安全性には課題があると感じている。われわれのような飲料メーカーや業界団体が、水の安全性について、お客さまにしっかりと説明していく必要があるだろう。
加盟店も導入する物流インフラ
─AIを活用したクリクラボトルの配送効率化システムの導入状況について聞きたい当社が開発したシステムインフラ「CrePF(クリップ)」は現在、直営店舗の全店で活用している。導入以前と比べると、クリクラボトルの配送にかかる時間は短縮できている。配送のスピードだけでなく、それに関わる事務作業などの効率化も含めて、コストを以前の約半分程度にまで抑えることができていると考えている。
加盟店においては、約30社が導入・テスト運用を行っている。検討中も含めると、約50社が導入に向けた対応を進めている。
今後は、「CrePF」に、顧客管理データも含めた、全てのデータを集約できる機能を搭載していく予定だ。今後、1年間で100社程度が導入に向けて動いていくだろう。